福島第一原発の処理水を薄めて海へ放出する政府の方針を評価してきたIAEA・国際原子力機関の包括報告書がまとまり、きょう岸田総理大臣がグロッシ事務局長から受け取る。
水野倫之解説委員の解説。
IAEAの報告書がまとまったということは処理水放出の設備面での前提が事実上整うことを意味する。
海洋放出の前提として政府は、基準の40分の1以下に薄める放出設備の完成と、原子力規制委員会の検査、そしてIAEAの報告書の3点を掲げてきた。
設備は先月完成し、規制委の検査も先週終了し今週中にも修了証が出る見込み。
最後まで残っていたのがIAEAの報告書だった。
IAEAは中国韓国の専門家を含む調査団を福島第一原発に派遣し、処理水のサンプルを各国に持ち帰って分析もし、安全性に問題はないとの見解を示していることから、包括報告でも同じ見解を示すとみられる。
処理水を巡っては中国や韓国など海外の一部から懸念が上がるが、政府はIAEA報告をもとに、安全性を国際社会に説明し理解を得たいとしている。
そして処理水今後の焦点はIAEA報告を受けとる岸田総理がいつ放出を判断するか。
政府は廃炉のために海洋放出は避けて通れないとして、夏ごろに放出するとしている。
ただその判断を左右するのが漁業や観光業者など地元の反対。
特に政府は漁業者に対し、「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と約束しているが、先週福島県漁連はあらためて「海洋放出に反対」する決議を採択し、反対姿勢を崩していないから。
それでも放出ということになるのか。今すぐの決断は容易ではないと思う。
漁業者は、安全性についての理解が十分に広がっておらず、風評被害のおそれがあることを懸念。
放出しかないというのであれば、一般消費者含め説明をいっそう尽くして、漁業者らの不安を取り除いていくことが不可欠。
この委員の記事一覧はこちら