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最低賃金 1000円へ 異例の審議開始

竹田 忠  解説委員

今年の最低賃金引上げを巡る議論が明日(30日)スタートします。
焦点は時給で平均1000円の達成です。

Qタイトルにある“異例”の審議という意味はなんでしょう?

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A
本来最低賃金というのは
労使と中立的な有識者の三者で話し合って決めるものですが、
今年は岸田総理大臣が1000円達成に強い意欲を示しています。

さらに1000円達成後の引き上げの方針についても
夏から別の会議で検討することになっていて
つまり1000円達成が前提となっている中で
審議が始まるという異例の展開になっているわけです。

Qなぜ、1000円がそこまで焦点になるんですか?

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A
政府は安倍政権の時に、平均1000円を目指すという
数値目標を初めて掲げました。
これを受けて、それまでは1~2%程度の引き上げだったのものが
ほぼ毎年3%の引き上げとなり、去年、ついに961円まで来たわけです。
いよいよ1000円が射程に入ってきたと。
今年も同じく3%引き上げれば990円。
1000円には一歩及びません。
今年一気に1000円に到達するには
4%強の引き上げが必要で、これは過去最大の引き上げ幅となります。

岸田総理大臣が、「今年1000円達成を含めてしっかり議論してほしい」とハッパをかけているのは、
このためなんです。

Q引上げを急ぐのは、やはりこの絵にある「物価高」のためですか?

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おっしゃる通りです。
物価の上昇が続いているために実質賃金が目減りしていて、
直近の今年4月の実質賃金は前年同月比で3.2%の減少でした。
これで実質賃金は13か月連続でマイナスです。
家計は苦しくなる一方で、
最低賃金の引き上げによる底上げが不可欠です。

Q今後、審議の流れはどうなるんでしょう?

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かぎを握るのは経営側です。
企業も原材料の仕入れなどで物価高の影響を受けていまして、
どれだけ支払い能力があるのか、
データにもとづいた審議が必要になります。

そして今年もう一つの焦点は、地域間格差の是正です。
最低賃金は最終的に都道府県ごとに決まります。
一番高い東京都の1072円と、
一番安い10の県(青森・秋田・愛媛・高知・佐賀・長崎・熊本・宮崎・鹿児島・沖縄)の853円との間には時給で219円という大きな開きがあります。
これをどれだけ縮小できるか?
先進国の中では最低賃金は全国一律、という所も多い。
チャンと暮らしていける最低賃金が必要です。


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竹田 忠  解説委員

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