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富雄丸山古墳「蛇行剣」公開 分かってきたことは?

高橋 俊雄  解説委員

奈良市の富雄丸山古墳から出土した長さ2メートルを超える剣が報道公開されました。
この古墳からは、盾のような形をした、類例のない鏡も出土しています。
どんなことが分かってきたのでしょうか。

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■「古墳時代の最高傑作」
剣と鏡は、古墳時代前期、4世紀後半に造られたとみられる奈良市の富雄丸山古墳で出土しました。

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剣は全長2メートル37センチ。波打つような形をした、「蛇行剣(だこうけん)」と呼ばれる鉄製の剣です。それまで確認されていた古墳時代の国内最長の剣の長さが1メートル15センチなので、その2倍に及び、東アジアでも例を見ない長さとされています。
調査結果はことし1月に発表され、現地説明会も開かれましたが、剣は周りの土ごと取り出して応急の保存処置を行う必要があったため公開されませんでした。その後、土の上に見えている片方の面の処置が終わり、27日に初めて報道公開されました。

一方、鏡は長さが64センチ。上部が丸みを帯びた盾のような形をしていて、裏面には神と獣が合わさったような表現や、のこぎりの刃のようなギザギザの文様があしらわれています。盾のような形をした鏡は類例がなく、調査担当者は「古墳時代の金属工芸の最高傑作」と評価しています。

■保存の過程で分かったことは
剣は木製の鞘(さや)に収められていました。この鞘と、手で持つ部分の柄(つか)には黒い漆の層があり、赤い顔料が付着していたことが分かりました。

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この長大な剣をどうやって作ったのか。報道公開には古代の刀剣の復元にも取り組んできた刀鍛冶の河内國平さんが同席し、鋼を温めたあと急速に冷ます「焼き入れ」が一番難しいと指摘したうえで、「大きな道具がいるし、重くて大変だと思う」と話していました。

■魔よけの効果 高めるためか

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長い剣と盾形の鏡。「規格外」ともいえる2つの副葬品を重ねて置くことで、埋葬された人物を守る「魔よけ」の効果をいっそう高めていたことがうかがえます。
一方、富雄丸山古墳は丸い形をした「円墳」です。直径が109メートルと円墳としては国内最大の規模を誇りますが、当時は「前方後円墳」がトップクラスの墓で、円墳はこれより立場が下の人の墓と考えられます。
このため、この古墳に埋葬された人物については、「ヤマト王権の中枢部にいて王権を支える人」といった見方が出ています。

■今後の調査は
剣はこのあと反対側の面の保存処置が行われます。こちらのほうが残りがよいとみられ、さらに詳しい状況が分かる可能性があります。また、剣と鏡が残されていた場所では、埋葬施設の内部の調査が今年度内にも行われる見通しです。
この時期は奈良盆地に誕生したヤマト王権が勢力を伸ばしていく重要な時期にあたりますが、中国の歴史書に日本に関する記述がなく、「空白の4世紀」ともいわれています。さらに「規格外」の発見はあるのか、国の成り立ちを考えるうえでも今後の調査に注目です。


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高橋 俊雄  解説委員

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