福島第一原発1号機の原子炉の土台が激しく損傷している問題で、原子力規制委員会は東京電力に対し、最悪のケースを想定した対策を求めている。水野倫之解説委員の解説。
今回は事故から12年たってまたあらたなリスクが見つかった形。
損傷がわかったのは原子炉を支えるこちらの鉄筋コンクリート製の円筒形の土台。
重さ440tの原子炉を支えるため、厚さ1.2mあったが、ロボットによる調査で、ほぼ全周にわたって、底から1mの高さまでコンクリートがなくなり、鉄筋がむき出しになっていることがわかった。
このコンクリート、1200度まで耐えられるとされるが、高温の溶けた燃料が触れるなどして、破壊されたとみられる。
こうした状況に大きな地震があれば土台が崩れ、内部の放射性物質が放出されるのではと、地元から不安の声も。
しかし東電は当初、去年の震度6弱の地震でも問題はなかったなどと楽観的だった。
これに対し規制委員会は、地震で原子炉が沈み、まわりの格納容器に穴が開く最悪のケースも想定すべきと指示。
今回損傷状態が詳しくわからずリスクをつぶしきれないことを重視したわけで、規制委の指示は妥当。
指示を受けて東電はきのう、土台が崩れて格納容器に40㎝の穴が開き、放射性物質が漏れるものの、敷地境界での被ばく量はごくわずかで住民への影響は考えられないとする計算結果と放出を抑えるため換気装置設置する対策を規制委に示した。
しかし規制委からは、内部の放射性物質を考慮すると被ばく量をもっと厳しく想定すべきとの指摘が出て、東電がさらに検討を進めている。
福島では住民の帰還も進み始めているわけで放射性物質放出による影響は二度とあってはならない。
東電は事故前、巨大津波の想定を知りながらも対策を先送りし事故を招いたわけで、その教訓をしっかり生かさなければならない。
土台損傷を重く受け止め、周辺住民が納得できる検討と対策を急がなければ。
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