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韓国で口てい疫 日本での発生に懸念広がる

佐藤 庸介  解説委員

ことし5月、韓国中部の地域で家畜の伝染病、「口てい疫」が発生し、日本でも懸念が広がっています。警戒すべき点について、解説します。

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Q.家畜の伝染病、「口てい疫」とは、どれだけ気をつけるべき病気なのでしょうか。

A.畜産関係者にとって脅威です。

口てい疫はヒトに感染することはありませんが、牛や豚、シカなどの幅広い家畜に感染し、ダメージを与えます。特徴は強い感染力で、見つかると拡大を防ぐために発生農場の家畜はすべて殺処分しなければなりません。

日本では、最近では13年前、宮崎県で発生しました。このときは30万頭近くの牛や豚などが殺処分され、地域に甚大な打撃を与えました。

Q.韓国での発生状況は、どうなっているのでしょうか。

A.農林水産省によりますと、5月10日に韓国中部の地域にある農場で、牛の感染が確認されました。韓国での口蹄疫の発生は4年ぶりで、その後、周辺でも相次いで確認され、5月22日の時点であわせて11件に上っています。

Q.海を隔てた韓国での発生ですが、日本でも警戒すべきものなんでしょうか。

A.最近、日本で発生したケースは、いずれも韓国で確認された前後でした。

口てい疫のウイルスは多くの場合、靴の底など人の持ち物にくっついて持ち込まれますので、日本を行き来する人の数が多い韓国での発生は、「警戒を高めるシグナル」とも言えます。

とくにコロナの影響が和らいで、韓国からの旅行者の数はことしに入って4月までに200万人を超え、コロナ前の8割近くまで回復しています。これは経済的には歓迎すべきことですが、家畜の伝染病の面では警戒が必要です。

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Q.私たちはどういうことに気をつければよいのでしょうか。

A.農林水産省は、まず、観光などで韓国に行ったときには牛や豚などを飼っているところに近寄らないこと。そして、韓国から帰国した後、少なくとも1週間は日本でもそうした牛や豚などを飼っている場所に近づかないよう強く呼びかけています。

あわせて気をつけなければならないのは、肉製品のお土産です。持ち込みは法律で原則禁止されています。

ジャーキーなどに加工していれば大丈夫ではないかと感じるかもしれませんが、口てい疫のウイルスは長ければ数か月間、感染力を維持する非常に手ごわい存在です。

農林水産省は、機内のアナウンスなどで注意すべき点について周知するよう、航空会社にも呼び掛けていますが、コロナで一時、休止していた会社の中にはやや意識が薄くなっているところもあるということで改めて徹底を要請しています。

最近は鳥インフルエンザの拡大で卵が品薄になって分かったように、家畜の伝染病は食卓にも影響を与えます。国内で口てい疫が発生・拡大して、くらしに影響が及ぶ事態を万が一にでも避けるために、動向には警戒する必要があります。


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佐藤 庸介  解説委員

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