福島第一原発のトリチウムを含む処理水の海洋放出を巡って、韓国の視察団がきょう、現地を視察する。
水野倫之解説委員が解説。
今回の韓国の視察団は今月7日の日韓首脳会談で合意したもので、韓国の原発や放射線の専門家がきょうから2日間福島第一原発に入り、浄化施設や貯水槽など、放出設備全体の運営状況を確認する予定。
なぜ今、韓国が視察団を派遣したのか。
韓国は今も、福島県を含む8県の水産物の輸入を禁止していて、処理水についても汚染水と呼ぶなど、放出による環境や健康への影響を懸念する声が国内に根強くあることが背景にある。
ただ日本との関係改善を進めたいユン政権は、放出の是非は科学的に判断する構えで、視察でその判断材料を集めたいわけ。
一方、視察団を受け入れる側の日本。
政府は処理水を薄めて夏ごろにかけて海洋放出する方針で、現地では放水設備が近く完成し、7月以降、物理的には放出が可能になるとみられる。
ただ周辺国で懸念の声を上げているのは何も韓国だけではない。
例えば中国は強硬で「核汚染水」と呼んで反対。
政府は各国大使館への説明会を開いたり、韓国語や中国語で処理水のサイトを作って、基準の40分の1以下に薄めるため影響はないと説明してきたものの、基準以下とはいえほかにも微量の放射性物質が含まれているなどとして、理解は得られていない。
そうした中、韓国の視察団に理解を深めてもらえれば、ほかの周辺国の理解を広げる突破口になるのではないかという思いがある。
ただ仮に周辺国の理解が進んだとしても先行きは不透明。
国内の漁業者、特に福島の漁業者らは絶対反対の姿勢を変えていない。
全国の消費者に放出への理解が依然として進んでいないことが理由で、風評被害につながることを懸念。
政府は放出の時期ありきではなく、時間をかけ、周辺国、そして国内の消費者への説明や対話を深めていかなければならない。
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