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どうなる スーダンの戦闘と人道危機

出川 展恒  解説委員

アフリカのスーダンで、先月半ばから続く軍と準軍事組織の戦闘は、未だに収束せず、人道危機が極めて深刻になっています。中東・アフリカ情勢担当の出川解説委員です。

Q1:今回の紛争の構図、そして、戦闘が収まらない原因は何ですか。

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A1:この戦闘は、スーダンの軍と、その傘下にあるRSF=即応支援部隊の権力闘争で、言ってみれば、2つの軍隊が、生き残りを賭けて、武力衝突しているのです。そもそもの発端は、4年前、バシール元大統領の長期独裁政権が、民主化を求める市民のデモと軍によるクーデターで倒されたことです。軍と民主化勢力が共同で暫定統治を行い、その後、軍が2度目のクーデターで実権を掌握。民主化勢力の抗議を受け、去年12月、完全な民政に移行することで合意しました。軍を一本化することになりましたが、RSF側がポストなどをめぐって拒否したのです。

Q2:深刻な人道危機が起きているようですね。

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A2:はい。戦闘の犠牲者は、すでに670人を超え、負傷者は、5500人以上と伝えられます。加えて、20万人以上が難民となって周辺国に脱出し、国内避難民も70万人を超えました。インフラや医療施設も攻撃され、医薬品や食料、安全な水が不足し、食料を保管する国連の倉庫なども略奪に遭い、人道支援活動に重大な支障が出ています。このままでは、人道危機が周辺国にも拡大し、大惨事になることが懸念されます。

Q3:国際社会は、どう対応していますか。

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A3:軍とRSFは、アメリカとサウジアラビアの仲介で、22日、日本時間のあす未明から、7日間の停戦に入ることで合意しました。双方は、これまで何度も停戦で合意したものの、すぐに破られてきたことから、今回は、関係国が停戦を監視するしくみを設けることも盛り込まれました。停戦を維持し、戦闘終結に結びつけ、そのうえで、民主的な国づくりの軌道に戻してゆくことが求められます。しかし、各国とも、自国の国民が無事避難した後、スーダンへの関心を失いつつあります。現在、G7の議長国と、国連安保理の理事国を務める日本。この紛争と人道危機の解決に向け、最大限の外交努力が期待されます。


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出川 展恒  解説委員

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