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バイデン来日へ"3つのねらい"

髙橋 祐介  解説委員

きょう来日するアメリカのバイデン大統領の“3つのねらい”について、髙橋解説委員とお伝えします。

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Q1.
けさのイラストは、バイデン大統領が、虎の前から竜の前に移動中?

A1.
『虎口を逃れて竜穴に入る』。国内政治の難局から、今度は国際政治の難局に挑む大統領をこんなイラストにしてみました。債務上限の引き上げをめぐり、議会との協議が難航し、当初の外遊日程は半分に短縮されますが、G7広島サミットは予定どおり出席します。
その第1のねらいは、就任以来アピールしてきた“アメリカの指導力回復”です。10年前、当時のオバマ大統領は「アジアに軸足を移す」と言いながら、同じ国内問題を理由にアジア歴訪をキャンセルし、多くの国々に不信感を抱かせたことがありました。今回は“アメリカファースト”を唱えるトランプ前大統領との再対決も念頭に、国際協調をないがしろにするかのような印象は避けたい思わくがうかがえます。

Q2.
2つ目のねらいは何ですか?

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A2.
“G7の重要性の復活”です。先進7か国は近年、相対的地位が低下して、いずれG20に主導権が移るという見方もありました。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、そうした見方は後退し、G7は、中ロをにらんで、外交・安全保障や経済政策を調整する場として再び重みを増しています。拡大会合には、インドやブラジル、インドネシアなど、グローバル・サウスと呼ばれる新興国や途上国の首脳らも招かれます。そうした国々とG7が連携し、「法に基づく秩序」の維持・強化を目指します。

Q3.
3つ目のねらいは?

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A3.
“核兵器の使用を断じて許さない”ことです。ロシアが核兵器を使う可能性をちらつかせ、中国は核戦力を増強し、北朝鮮も核開発を続ける今、抑止力を単に強化するだけではなく、かつてアメリカが原爆を投下した広島を大統領が自ら訪れて、被ばくの実相に触れること、それ自体が惨禍を2度と起こさせないメッセージになりそうです。
3つのねらいは、どこまで達成できるのか?世界の注目が集まります。


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髙橋 祐介  解説委員

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