軍事侵攻を続けるロシア軍に対して、ウクライナ軍による大規模な反転攻勢はいつどのように始まるのか。作戦のポイントを国際・安全保障担当の津屋尚解説委員が解説します。
Q1. 反転攻勢はいつ始まるのでしょうか?
A1. 現在の戦闘の状況をみると、反転攻勢の“地ならし”とも言える予備的な作戦は、すでに始まっているように見えます。これに続く本格的な進攻作戦は、いつ始まってもおかしくありません。作戦には、ドイツ製の主力戦車レオパルト2をはじめ、欧米の様々な兵器を備えた大規模な部隊が投入されます。これらの部隊は、バフムトなどでの激戦が続く間もそこには加わらず、その間、NATOの指導の下、訓練を重ねてきました。膠着が続いたこれまでとは全く違う“大攻勢”になるだろうと思います。
Q2. 具体的にはどんな作戦ですか?
A2. 有力視されているのは、1000km以上に広がる長大な戦線のうち、ロシア軍の守りの薄い数箇所に戦力を集中させて、そこから突破を図る。そして、ザポリージャ州など南部の沿岸部を目指すというものです。そのあとは、クリミア半島にすぐには攻め込まず、補給路を遮断してクリミアのロシア軍を孤立させる作戦が行われるとNATOに近い専門家は話しています。
そしていま、イギリスが供与した兵器に世界の注目が集まっています。射程が250キロ以上ある空中発射型の巡航ミサイル「ストームシャドー」です。本来互換性のない旧ソビエト製の戦闘機ミグ29(ポーランドなどが初めて供与した戦闘機)に、このミサイルを搭載できるよう、機体の改良が密かに行われました。これによってウクライナ軍は、クリミアを含め、これまで難しかった後方にあるロシア軍の拠点を正確に攻撃できるようになりました。戦況に大きな影響をもたらしそうです。
Q3. 反転攻勢はうまくいきそうですか?
A3. ロシア軍は戦力が激しく消耗していますから、苦戦は必至だと思います。それでも、地雷原や塹壕などで何重にも防衛線を築き、徹底的に守りを固めています。攻め込むウクライナ軍も、供与を求めてきた装備がすべてそろったわけでなく、訓練も急ごしらえにならざるをえませんでしたから、作戦は困難と犠牲を伴う可能性がある。そうした中でいつ反転攻勢を始めるのか、ゼレンスキー大統領の決断が注目されます。
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