14日に投票が行われたタイの総選挙は、軍の影響力排除を掲げる革新系の政党とタクシン元首相派の政党の野党2党が下院の過半数を占める見通しとなりました。
Q1.野党の勝利ですね。
クーデターから9年。タイの国民は変化を求め軍の支配にノーを突き付けたかたちです。世論調査ではタクシン元首相派の「タイ貢献党」が終始トップを走っていたのですが、選挙戦最終盤になって「前進党」が急速に支持を伸ばし、そのままの勢いで第1党になる見通しです。前進党は実業家で42歳のピタ党首のもと軍の支配に反対し、王制改革を掲げて都市部の若者たちの支持を集めました。タイ貢献党は農村部や低所得者層の間で今も根強い人気を保っているタクシン氏の次女ペートンタン氏を首相候補に立て、第2党になる見通しです。一方、軍に近い与党の「国民国家の力党」は内紛により分裂し、プラユット首相は新党から立候補、与党は惨敗しそうです。
Q2.そうなると軍部の影響力を排除した政権が誕生するのでしょうか。
まだハードルがあります。というのは下院を野党が制しても首相の選出には、軍政時代に任命された上院の250議席との合計で過半数が必要だからで、新政権は今後の連立交渉次第です。野党の2党は政策が異なり、敵対しあってきたタイ貢献党と軍に近い政党などが手を組む可能性も指摘されています。
Q3.タクシン派の政党が政権を握る可能性もあるのですね。
タクシン派の政党は、2001年以降いずれの選挙でも勝利しながら度重なるクーデターや党の解散命令などで政権を失い、前回は第1党になりながら政権を逃しました。今月初め第二子を出産したばかりのペートンタン氏が政権を奪還し、帰国を望む父親の願いを叶えることができるか注目されます。
タイにはおよそ8万人の日本人が暮らし、東南アジアで最も日本と関係の強い国の1つですが、民主主義には程遠くクーデターの後遺症を今も引きずっています。政治の安定と民主化への道を開くことができるか、連立の行方とともに軍の出方も注目されます。
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