NHK 解説委員室

これまでの解説記事

トルコ大統領選挙 エルドアン氏の再選は?

出川 展恒  解説委員

トルコでは、14日に大統領選挙が行われます。過去20年にわたってトルコの政治をリードしてきたエルドアン大統領が再選されるかどうかが最大の焦点です。
中東情勢担当の出川解説委員です。

c230512_1.jpg

Q1:
トルコの大統領選挙、直前の情勢はどうなっていますか。

A1:
4人が立候補しましたが、現職のエルドアン氏に、野党6党の統一候補で、エコノミストのクルチダルオール氏が挑む、事実上の一騎打ちです。エルドアン氏は、何としても再選を果たし、今年10月のトルコ共和国建国100周年を迎えたいところですが、最新の世論調査では、わずかながら、クルチダルオール氏がリードし、政権交代の可能性もあります。

Q2:
エルドアン氏が苦戦を強いられている理由と選挙の争点は何ですか。

c230512_3.jpg

A2:
主に2つあり、ひとつは経済です。エルドアン政権は、めざましい経済成長を実現しましたが、今、激しいインフレに見舞われています。去年10月には、インフレ率が85%に達し、現在も50%程度で、人々の暮らしは非常に苦しくなっています。どちらの候補も、インフレ率を一桁台に戻すと公約しています。

Q3:
もうひとつは何ですか。

c230512_6.jpg

A3:
エルドアン氏の主導で、5年前に導入された、いわゆる「実権型の大統領制」の是非です。野党のクルチダルオール候補は、大統領を国民の直接選挙で選び、絶大な権限を与えるこの制度が、エルドアン氏の独裁化と、政府の機能不全を招いたとして、もとの「議院内閣制」に戻し、三権分立を確立すると公約しています。さらに、エルドアン氏は、2月の大震災での対応の遅れや、震災対策の不備などでも強い批判を浴びています。

Q4:
選挙結果によって、どんな影響が出るでしょうか。

c230512_7.jpg

A4:
エルドアン氏は、ロシアとウクライナの間で、停戦の仲介にあたってきたほか、スウェーデンのNATO加盟問題、少数民族クルド人の扱い、シリアの内戦や難民問題など、多くの国際問題でカギを握っています。また、同盟国であるアメリカとの対立も抱えています。選挙の結果しだいでは、国際情勢に少なからぬ影響が出るでしょう。過半数の票を得る候補が出ない場合、上位2人の決選投票となりますが、最後の最後まで目が離せません。


この委員の記事一覧はこちら

出川 展恒  解説委員

こちらもオススメ!