コストの上昇で全国的に酪農や畜産の経営が厳しくなる中、農林水産省は4月28日、新たな会議をスタートさせました。どんなことが話し合われるのか、お伝えします。
Q.新たな会議ということですが、どういう目的で開くのですか。
A.コストの上昇分を商品価格に転嫁できる環境を整えようというねらいです。
会議には、生産者、メーカーや流通、消費者、有識者の代表、21人が参加します。
家畜のエサの価格が高止まりして、酪農や畜産に携わる人たちの経営が厳しくなり、とくに酪農では離農が相次いでいることが背景にあります。
会議は非公開で、商品価格に転嫁しやすくする仕組みや消費者に理解を得る方法などについて話し合い、6月に中間のとりまとめを行うということです。
Q.転嫁ということですが、牛乳の値段は去年、上がったと思います。すでに転嫁しているのではありませんか。
A.確かにそうです。
牛乳については、大手3社が去年11月に値上げしました。メーカーと生産者団体が交渉し、メーカーの仕入れ価格、「乳価」が上がったからです。牛乳向けの乳価は、ことし8月にも上がる予定で、一部のメーカーは再び牛乳の値上げを検討しています。
それでも交渉では、大手メーカーのほうが立場は強く、酪農家から「コストの上昇に対して十分でない」という声が出ています。
このため、航空運賃で燃油価格の上昇分を別建てで転嫁している、「サーチャージ」と呼ばれる仕組みを導入できないか、検討が進められる見通しです。
Q.いろいろなものが値上がりする中、簡単に値上げとなると困るという消費者も多いのではないでしょうか。
A.確かにそうだと思います。
会議のメンバー、21人のうち、消費者側は4人。それに対し、生産者側は各種畜産団体の代表、8人と2倍います。消費者の意見が十分に反映されるのかと思う人もいるでしょう。
かといって、酪農家も安心というわけではありません。去年11月の値上げのあと、牛乳の消費は低調で、8月にふたたび値上げとなるとさらに落ち込む可能性もあります。消費者の理解につながらなければ、たとえ転嫁の仕組みを導入したとしても消費が冷え込むだけになるおそれがあります。
生産から消費まで、どういう状況なのか、正確な情報を共有する機会はとても貴重です。せっかく新しい会議を立ち上げたのなら、たとえば公開にするなど、もっと広く関心が集まるよう工夫して、ただ形式的に話し合うような場にしないよう望みます。
この委員の記事一覧はこちら