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新"宇宙基本計画"で安全保障強化へ

津屋 尚  解説委員

今後10年間の日本の宇宙政策の方針を示す「宇宙基本計画」の案が今月17日に公表され、様々な安全保障面の強化策が盛り込まれました。その背景と課題について、国際・安全保障担当の津屋尚解説委員が解説します。

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Q1:何やら宇宙が物騒な感じですね?

A1:宇宙では国家間の競争が激しくなっていて、軍事面でも宇宙の重要性が高まっています。その背景にあるのは、宇宙の利用の急速な拡大です。去年1年間だけで2400もの衛星が新たに打ち上げられました。気象衛星や通信衛星、いわゆるGPS衛星など、私たちの社会や経済は宇宙への依存がどんどん大きくなっています。それにつれてリスクや脅威が高まっていると基本計画案も指摘しています。
専門家の間では、宇宙は“戦場“の一つと考えられているんです。

Q2: 宇宙が戦場ですか? 

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A2: 現代の作戦指揮は人工衛星を介して行われますし、北朝鮮などの弾道ミサイルの探知や迎撃にも人工衛星は欠かせません。しかし、宇宙のシステムが破壊されれば、作戦は機能しません。地上の戦いに勝利するには宇宙で主導権を握ることが不可欠になっています。このことはウクライナの戦争でも再認識されています。
こうした中、「宇宙強国」を掲げ宇宙の覇権を目指していると言われる中国は、独自の宇宙ステーションや中国版GPSを持ち、さらには、衛星を攻撃する様々な兵器を保有しています。
これに対して、宇宙へのアクセスをどう確保するのか、また、日本の安全を高めるため、宇宙をどう使うのかが課題です。

Q3:具体的には何をするのですか?

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A3:宇宙基本計画案には様々な強化策が盛り込まれていますが、例えば、▽「衛星コンステレーション」といって、宇宙空間に一列に並べた数多くの小型衛星によって、情報収集や通信の能力を高めること、▽衛星が使えなくなる事態に備えて、同じ能力の衛星を数多く保有しておくこと、▽マッハ5を超える猛スピードで飛翔する中国やロシアなどの「極超音速兵器」を探知・追尾する技術の実証実験を行うことなどが盛り込まれています。ただ、技術的ハードルが非常に高いものもあるので、同盟国のアメリカなどとの協力に加えて、国と産業界が連携して成果を上げられるかどうかもひとつの鍵になると思います。


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津屋 尚  解説委員

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