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日本学術会議"見直し"の行方は?

土屋 敏之  解説委員

◆日本学術会議のあり方を見直す法律の改正案、政府は今国会への提出を見送り

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日本学術会議は科学者の代表として政府に助言などを行う国の機関ですが、3年前、当時の菅総理が会員候補6人を任命しなかったことで対立があらわになりました。その後、焦点は学術会議の見直しに移り、政府は今月、会員選考に透明性を求めるとして第三者の諮問委員会を関与させるなどの改正案を示しました。学術会議は18日、これが独立性を損なうとして今国会への提出を思いとどまるよう政府に勧告。後藤担当大臣は20日、「このまま閣議決定した場合、学術界と政府の決定的な決裂を招くおそれもある」として、今回の見送りを表明しました。

◆これで対立は収まるのか?

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あくまでこの場面での決裂は避けられた、という状況です。
これまで軍事研究反対などの声明を出してきた学術会議には保守派などから根強い不満があり、自民党のプロジェクトチームは国から切り離すことを求めてきました。政府案はこれよりは会議側に配慮した内容とされ、“これでのまないなら国から切り離すしかない”といった声もむしろ強まったと言われます。
一方で先進国では、国に助言する科学者の代表機関は今の学術会議と同様、自ら会員を決める仕組みが一般的で、諮問委員会を関与させる政府案も会議側には受け入れがたい面があります。
  
◆今後の見通しは?

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政府は学術会議にこの案の受け入れをさらに求めるのと並行して、民間団体にする案も作っていくと見られます。
ただ、実はこの秋、学術会議は6人が任命されないまま次の任命の時期を迎え、政府はその前に法改正をめざしていたものの、それはもう間に合わなくなりました。だとすれば、一度立ち止まって、政治とアカデミズムのよりよい関係を開かれた場でしっかり議論する時ではないでしょうか。


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土屋 敏之  解説委員

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