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緊張高まるイスラエル・パレスチナ

出川 展恒  解説委員

イスラエルとパレスチナとの間では、今月に入り、衝突や攻撃の応酬が起き、緊張が高まっています。中東情勢担当の出川解説委員です。

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Q1:
高まる緊張の背景に何があるのですか。

A1:
イスラエルで、去年12月、ネタニヤフ首相が政権に返り咲き、「超タカ派」と言われる連立政権を発足させたことが背景にあります。極右政党を率いる2人の政治家が、治安や占領政策の権限を握る閣僚に就任し、パレスチナに対し、極めて強硬な姿勢で臨んでいます。

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そして、今月5日、エルサレムの旧市街地にある「アルアクサ・モスク」と呼ばれるイスラム教徒にとって非常に重要なモスクに警察部隊が突入し、中にいたパレスチナ人たちを排除しようとしたのが、一連の衝突のきっかけです。大勢のけが人と逮捕者が出ました。

Q2:
政治と宗教が絡み合った問題なんですね。

A2:
はい。エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の共通の聖地で、イスラエル、パレスチナの双方が首都だと主張しています。とくに旧市街の聖域では、過去にも、大規模な衝突が起きています。

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折しも、イスラム教の「ラマダン」、ユダヤ教の「過ぎ越しの祭」、双方にとって大切な宗教行事の最中で、宗教的な感情が高揚していました。パレスチナの武装組織は、報復として、パレスチナ暫定自治区のガザ地区や、イスラエルの隣国のレバノン、および、シリアから、ロケット弾を撃ち込み、これに対し、イスラエル軍は、それぞれの拠点に空爆を行いました。銃撃事件や車を使ったテロも、各地で起きています。加えて、今回の衝突には、イスラエルの内政の混乱も絡んでいます。

Q3:
それは、どういうことですか。

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A3:
ネタニヤフ連立政権は、最高裁判所の決定を議会の過半数の賛成で覆せるようにするなど、司法制度の改変を目指しています。これについて、国内では、民主主義を損なう暴挙だとして、大規模な反対運動が起き、政権維持が難しくなっています。求心力を回復するため、軍事攻撃を強化する可能性も指摘されます。今週、ラマダンの宗教行事が最高潮を迎えることもあって、双方の暴力の応酬がエスカレートすることが非常に心配されます。


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出川 展恒  解説委員

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