全国の書店員が「一番売りたい本」を投票で選ぶことしの「本屋大賞」が発表されました。
本屋大賞はことしで20回。賞の特徴などについて解説します。
■「売り場からベストセラーを」
本屋大賞は、出版不況のなか売り場からベストセラーを作り出そうと書店員の有志が始めた賞で、2004年が第1回です。このときの受賞作は小川洋子さんの「博士の愛した数式」。
翌年の2回目は恩田陸さんの「夜のピクニック」でした。
その後も多彩な作品が受賞作に選ばれ、ことしは凪良ゆうさんの「汝、星のごとく」に決まりました。凪良さんは2020年の「流浪の月」に次いで、2回目の受賞です。
■書店員の投票で選考
この賞は、少数の選考委員が受賞作を決める従来の文学賞とは異なり、参加を希望する書店員が投票で選びます。
選考の対象は直近の1年間に刊行された日本の小説で、まず一次投票で3つの作品を投票します。次に、一次投票の上位10作品を対象に二次投票を実施。10作品すべてを読んで感想コメントを書き、1位から3位まで投票する決まりです
投票に参加する書店員は初回のあと大幅に増え、ことしは一次投票に615人、二次投票には422人が参加しました。
また、時代を超えて読んでほしい本などを選ぶ「発掘部門」や、「翻訳小説部門」も設けられています。
受賞作が発表されると多くの書店でフェアが開かれ、出版社は発行部数を増やします。
例えば去年の受賞作、逢坂冬馬さんの「同志少女よ、敵を撃て」は、初版は3万部でしたが、受賞に合わせて35万部を増刷。累計50万部のベストセラーになっています。
本の売り上げに直結しているだけでなく、これまでの受賞作の大半が映画化されるなど、社会的に影響力のある賞として定着しました。
■書店はさまざまな本と出会える場所
日本出版インフラセンターによりますと、全国の書店の数は3月末の時点でおよそ1万1500。本屋大賞が始まった2004年の同じ時期と比べると55%になってしまいました。
それだけに、本屋大賞の受賞作やノミネート作の販売には力が入りますが、書店はベストセラーだけでなく、さまざまな本と出会える場所です。この賞をきっかけに、ほかの本にも手を伸ばしてもらえるよう、さらに工夫を凝らしてほしいと思います
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