NHK 解説委員室

これまでの解説記事

台湾総統 米下院議長と会談へ

髙橋 祐介  解説委員

台湾の蔡英文総統は、5日、アメリカのマッカーシー下院議長と会談します。髙橋解説委員とお伝えします。

C230405_5.jpg

Q1)
けさのイラストは、蔡英文総統をマッカーシー議長が熱烈歓迎?
A1)
先週からニューヨークを経由して、中米グアテマラとベリーズを歴訪した蔡英文総統は、台湾への帰路、4日、経由地のロサンゼルスに到着します。マッカーシー下院議長ら超党派の議員団との会合は、翌5日、近郊のレーガン大統領図書館で開かれます。現職の台湾総統が、アメリカ本土で議会トップと会談するのは初めてです。これに中国は神経を尖らせて、「必ず対抗措置をとる」と警告しています。

Q2)
中国による対抗措置はどうなりそう?
A2)
去年8月、当時のペロシ下院議長による台湾訪問で、中国は、軍事的な示威行動の一方で、台湾との貿易も一部制限しましたが、台湾の半導体産業は制裁の対象にしませんでした。今回も同様の措置をとる可能性がありますが、中国経済に打撃を与えない範囲にとどめるという見方がアメリカ側には多いようです。来年1月の台湾総統選挙への影響も、中国は考慮するでしょう。
最大の焦点は、いま米中が模索している関係改善に実質的な影響が出てくるかどうかです。バイデン政権は、中国が過剰反応しないよう冷静な対応を呼びかけています。ただ、民主党のバイデン大統領と、共和党のマッカーシー議長との間には、微妙な認識のズレもあるようです。

Q3)
マッカーシー下院議長には、どんな思わくがある?
A3)
もともとマッカーシー議長は、就任当初から対中強硬姿勢をアピールし、自らの台湾訪問に意欲を見せてきましたが、中国の反発による安全保障上のリスクを台湾側が懸念して、議長の地元カリフォルニアでの会談を説得した経緯がありました。このため、蔡英文総統は今回、発言に細心の注意を払うでしょう。ただ、マッカーシー議長や対中強硬派議員らの言動は、誰もコントロールできません。はたして米中双方は、対立がエスカレートするのを防げるか?台湾の蔡英文総統とアメリカのマッカーシー下院議長の会談は、緊張をはらんだものになりそうです。


この委員の記事一覧はこちら

髙橋 祐介  解説委員

こちらもオススメ!