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トランプ氏は起訴されるか?

髙橋 祐介  解説委員

アメリカのトランプ前大統領が、近く起訴されるかも知れないという観測が高まっています。髙橋解説委員とお伝えします。

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Q1)
けさのイラスト、トランプ氏がロケットにしがみ付いている?
A1)
来年の大統領選挙にいち早く立候補を表明し、ホワイトハウスをめがけて舞い上がろうと懸命なトランプ氏。その足もとでは、かつて不倫関係にあったと主張する女性に口止め料が支払われた問題で、導火線に火が点くかも知れません。
ニューヨーク州の大陪審は、近くトランプ氏を起訴するかどうかを判断するという観測が高まっているのです。
衆人環視のもとにおかれるホワイトハウスを“牢獄”に喩えた大統領は、過去に何人もいましたが、実際に罪に問われて刑務所に入った人はいません。仮にトランプ氏が起訴されたら、大統領経験者としてはアメリカ史上初めてとなるのです。

Q2)
トランプ氏が起訴されたら来年の大統領選挙では不利になる?
A2)
当然そうした見方もありますが、逆の見方もあります。裁判でトランプ氏が無罪を勝ち取れば、“捜査は政治的な動機によるものだ”とする検察批判は説得力を増すでしょう。マッカーシー下院議長ら多くの共和党議員も、そうした批判に同調しています。仮に有罪が確定した場合でも、獄中から立候補は法的に可能です。ただ、トランプ氏をめぐり捜査が進められている疑惑や問題は、これだけではありません。

Q3)
このほかに、どういう疑惑や問題があるのですか?
A3)
トランプ氏が大統領在任中の機密文書を自宅に持ち出していた問題や、前回の大統領選挙のあと、議会乱入事件で権力移行に違法に介入した疑惑、それに南部ジョージア州の開票結果を覆そうと違法な圧力をかけた疑惑です
こうした疑惑や問題にも火が点いたら、トランプ支持者を結束させる一方で、中道寄りの共和党支持層や無党派層のさらなる“トランプ離れ”を招きかねません。
はたしてトランプ氏を乗せたロケットはどこに飛んでいくでしょうか?来年のアメリカ大統領選挙は、刑事被告人が戦う異例の選挙になるかも知れません。


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髙橋 祐介  解説委員

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