障害のある人が日々の生活のために使っている「障害福祉サービス」。このサービスが65歳で打ち切られたことを不服とした裁判の判決がきょう東京高等裁判所で言い渡されます。竹内哲哉解説委員に聞きます。
Q.障害福祉サービスの道が大きな壁で塞がれていますね。
A.「65歳の壁」と呼ばれるこの壁。障害者が65歳になると従来の障害福祉サービスから介護保険サービスへの切り変えを求められます。ただ、障害福祉サービスは社会参加の機会の確保まで含めた日常生活支援。介護保険サービスは日常生活に限って最小限の身の回りの介護をする支援です。そのため、障害福祉では必要と認められていた食事などの介助や掃除、外出支援などのサービス量が減ったり、サービスを利用する際の負担額が増えたりします。生涯を通じて収入が少ない障害者にとって負担が増えるのは死活問題です。こうした問題を巡って天海正克さんは裁判を起こしました。
Q.なぜ、65歳になると障害福祉サービスが利用できなくなるんでしょうか。
A.障害者総合支援法の第7条に65歳以上になると障害福祉サービスと対応する介護保険サービスがある場合は介護保険を優先するという規定があるからです。
Q.法律で規定されていると壁は厚いですね。
A.ただ、厚生労働省は原則優先としつつ、「一律に介護保険サービスを優先させることなく、個々の状況に応じて支給決定がなされるようお願いする」という通達を市町村に出しており運用での解決を図っています。
Q.自治体がうまく運用すれば障害福祉サービスも受けられるということですか。
A.東京・国立市のように「介護保険は強制しない。介護保険の申請がない限り、障害福祉サービスを継続できる」と、介護保険との併用も含め障害福祉サービスを提供している自治体は増えてきています。しかし、障害福祉サービスは税金で賄われており、自治体の負担が大きいため、介護保険優先の原則を守る自治体も少なくありません。
Q.どこで暮らしても、必要な支援を得られると良いですよね。
A.人生100年時代と言われる中、障害のあるなしに関係なく、いくつになっても、どこで暮らしても、生活の質と尊厳が守られるよう法を整備し、制度を運用していくことが求められていると思います。
この委員の記事一覧はこちら