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政労使会議と"構造的賃上げ"

竹田 忠  解説委員

政府は春闘での賃上げを後押しするため、
政府と労働団体、経済界のトップが話し合う「政労使会議」を
8年ぶりに明日(15日)開く見通しです。担当は竹田忠解説委員です。

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Q この絵は皆で賃金を上げようとしている所ですか?

そうなんです。この下がり続けている赤いラインが実質賃金でして
急激な物価高を差し引いた実質賃金は
10か月連続のマイナスで生活は厳しくなるばかり。
この春闘で少しでも賃上げできるよう
岸田総理大臣、連合の芳野会長、経団連の十倉会長という、
政・労・使のトップ三者が一堂に会して8年ぶりとなる政労使会議を開くんです。

Q 今年の春闘では、いつもより賃金がアップしたという所も出ていますが?

そうなんです。ただそれはあくまで一部の大企業が中心の話しで、
問題は勤めている人の7割が働く中小企業で、
十分な賃上げができるのか、どうか?という所。
そのためのカギとなるのは、「価格転嫁」なんです。

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Q 具体的に言いますと?

たとえば大企業と取引している下請け企業にとっては
原材料価格の上昇分を商品価格に上乗せして売れるようにならないと
儲けがでないし、賃上げの余裕が生まれません。
ここはぜひ、経済界全体として
適正な価格転嫁は受け入れるよう協力を呼びかける必要があると思います。

Q 労働界にとってはどういう意味があるんでしょう?

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実は今、政府が目指しているのは単なる「賃上げ」だけではなく、
継続的に引き上げられる「構造的な賃上げ」なんです。
政府はそのためにはジョブ型雇用の導入・労働移動の円滑化、そしてリスキリング。
この三つに取り組むことが必要だと言っている。

ただ、その一方でこうした取り組みは
年功賃金や、終身雇用という日本型雇用の見直しにつながるので、
労働側が反発することも考えられる。

この会議としてそういうことにどうやって理解や協力を求めるのか、
そこも大きな注目だと思います。


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竹田 忠  解説委員

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