来年のアメリカ大統領選挙で、民主党は、州ごとに行う候補者選びの序盤戦の順番をあらためて、これまで最初に予備選挙を行ってきた東部ニューハンプシャー州を2番目とする見通しです。髙橋解説委員です。
Q1.
けさのイラストは、幌馬車レースみたいですが?
A1.
大統領選挙の候補者選びは“緒戦が肝心”と言われます。とりわけ中西部アイオワの党員集会や東部ニューハンプシャーの予備選挙は、メディアから大きな注目を集め、その後の情勢にも影響するからです。
共和党は、来年も従来の順番を踏襲します。ところが、民主党は、手続きが煩雑な党員集会は廃止して、予備選挙の順番も、▽黒人有権者が多い南部サウスカロライナ、▽ヒスパニック系が多い西部ネバダと白人が大半を占めるニューハンプシャー、▽激戦州の南部ジョージア、▽中西部ミシガンの順に改めようというのです。バイデン大統領が提案したもので、今週末の民主党全国委員会で採決が予定されています。
Q2.
どうして民主党は順番を変える?
A2.
人種の「多様性を反映させるため」です。ただ、再選に意欲を見せているバイデン氏は前回=2020年には、緒戦で大きく躓き、土壇場のサウスカロライナでようやく起死回生の勝利をつかんだ経緯があったため、来年はサウスカロライナを1番とすることで、自らの再選に有利にしたい思わくもうかがえます。この新たな順番に“ノー”を突きつけたのが、ニューハンプシャー州。「2番じゃダメだ」と言うのです。
Q3.
どうして2番じゃダメなのですか?
A3.
ニューハンプシャーは、共和党が州知事と州議会の多数派を握っているので、州の法律改正が難しいというのが、最大の理由です。両党が別の日に予備選挙を行えば、経費がかさむという事情もあります。
しかも、共和党は、トランプ氏以外にも立候補が取り沙汰されていますが、民主党は、バイデン大統領が再選を目指して立候補することに反対する目立った動きは今のところありません。
これまでニューハンプシャーは、人口140万足らずの小さな州だからこそ、当初のバラク・オバマ氏のような知名度や資金力に劣っていた“ほぼ無名の候補”でも、ここで有権者と直接触れ合うことで頭角をあらわし、草の根の民主主義を支えてきたと自負します。来年の順番変更は、そうした“未来の大統領”のチャンスをも奪いかねないと言うのです。
民主党は、調整になお時間を要し、最終決定を今年6月まで先送りする可能性もありそうです。
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