ウクライナへの戦車の供与に慎重だったドイツが、イギリスに続いて主力戦車を引き渡すことを決めました。なぜ姿勢を転じたのか、またウクライナ情勢にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
Q1.戦車に乗っているのはヒョウですか?
はい。ドイツの主力戦車は「レオパルト・ツヴァイ」。レオパルトはヒョウ、ツヴァイが2です。ヒョウのように素早く強い世界最強戦車の1つと言われ、ドイツ以外にヨーロッパやアジアの国々が2千両保有しています。ドイツ政府は各国の圧力に屈するかたちで14両の供与を決め、各国が保有するレオパルト戦車の供与も認めました。すでにポーランドやスペイン、カナダなどがウクライナへの供与を表明しています。イギリスも「チャレンジャー2」を14両、アメリカは「エイブラムス」31両の供与を発表しており、ウクライナのクレバ外相はきのう31日、12か国から120から140両送られる見通しだと述べました。春以降ウクライナに強力な戦車が揃うことになります。
Q2.そうなるとウクライナ情勢にも影響しそうですね。
ロシアにとって大きな脅威でしょう。ただ、ロシアの大攻勢までに配備が間に合うか今後の焦点の1つです。また、戦車の次は戦闘機の供与をめぐって議論を呼びそうですが、ドイツのショルツ首相は、戦闘機は供与しないと述べています。
ドイツは過去の教訓から、対ロシア戦争の先頭に立つことだけは避けたいとして突出した行動を控えてきました。
Q3.過去の教訓ですか?
第二次世界大戦でナチス・ドイツがソビエト軍と激しい戦火を交えた独ソ戦はドイツ人の脳裏に悪夢として刻まれています。ウクライナは激戦地の一つでした。ヒトラーとスターリンによる史上最大規模の地上戦は3000万人以上が犠牲となりドイツは戦争に敗れ国土が二分されました。ドイツ人の反戦意識が高いのはこうした過去の反省に立っているからです。
ロシアの侵略からまもなく1年、双方が戦力を増強し続ければ事態が悪化し長期化が避けられません。現状では停戦は難しいもののこれ以上犠牲者を出さないために出口を探す外交努力が何よりも求められるのではないでしょうか。
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