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宇宙飛行士を初の懲戒処分 研究のねつ造何があった? JAXAは研究体制の抜本立て直しを

水野 倫之  解説委員

有人宇宙開発の研究でねつ造があった問題で、JAXA・宇宙航空研究開発機構は、研究責任者の古川聡飛行士らを処分した。水野倫之解説委員の解説。

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神妙な面持ちの古川飛行士を描いてみた。
今回のねつ造、古川飛行士が直接関与したわけではないが、責任者として指導する立場にありながら防げなかった責任は重いとして、戒告の処分を受けた。
宇宙飛行士の処分は初めてで古川飛行士は会見で、「国民の信頼を損ね、責任を痛感している」と謝罪。

今回の研究は、飛行士の惑星探査を想定し、一般の40人に宇宙船を模擬した閉鎖空間で2週間過ごしてもらい、どんなストレスを受けるのか調べる研究。
ところがチームの研究員が、参加者の精神状態を聞き取る面談結果を書き換えたり、存在しないデータをねつ造していた。
古川飛行士も、研究員を信頼するあまり、責任者としてデータの確認を怠っていた。
JAXAは研究を中止、2億円使いながら成果が得られなかったわけで、処分は当然だと思う。
捏造の理由について研究員は、ほかの仕事が忙しく、研究に専念できなかったと話している。
ただ日本は、アメリカと月面に日本人を送る交渉をし、飛行士の選抜試験を行うなど、有人飛行に積極的に打って出ようという中で、飛行士の健康に直結する研究がずさんだったわけ。
有人飛行の安全にも関わる話なので、古川飛行士ら個人の問題だけで終わらせるのではなく、組織の問題と捉えていかなければならない。

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古川飛行士は今年中にも宇宙ステーションへの飛行を予定しているが、JAXAは飛行士の資質と研究者の資質は別だとして、予定通り行う方針。
ただ飛行士は地上の研究者を代表して宇宙で実験を行うわけで、宇宙飛行と言う前に、JAXAの研究体制を抜本的に見直し二度と不正が起きない仕組みをきちんと示して、信頼回復を図っていくことが求められる。


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