将棋の藤井聡太五冠に羽生善治九段が挑む、「王将戦」七番勝負が開幕しました。
将棋界を代表する2人が最高峰の舞台であるタイトル戦で戦うのは、今回が初めて。注目の対局です。
■藤井五冠が白星スタート
王将は将棋の八大タイトルの1つで、七番勝負で4勝したほうがタイトルを手にします。
藤井五冠にとってはすでに手にしている王将のタイトルを守る戦い、挑戦者の羽生九段にとってはこれを奪いにいく戦いです。
第1局は8日と9日に行われ、藤井五冠が勝ちました。
■「平成の王者」羽生九段
羽生九段のこれまでのタイトル獲得の歩みは、平成とともにありました。
平成元年、19歳で初めてタイトルを獲得。そして平成8年、25歳のときに当時の七大タイトルを独占する史上初の「七冠」を成し遂げました。
将棋界で初めてとなる国民栄誉賞を受賞し、通算のタイトル獲得数は歴代最多の99期。「平成の絶対王者」としてタイトルを積み上げてきました。
今回の七番勝負を制すれば、羽生九段にとっては令和初のタイトル獲得となり、前人未到の「タイトル通算100期」を成し遂げます。
■50代でタイトル挑戦
羽生九段は52歳。日本将棋連盟によりますと、これよりも年上でタイトル戦に挑んだ棋士は、これまで3人しかいません。
羽生九段のすごさについて、かつてタイトル戦で対局したことのある、日本将棋連盟常務理事の森下卓九段は、「AIで大きく将棋が変わっている中で、将棋に対する情熱や勝つことへの執念をずっと持続している」と指摘します。
そのうえで、「今回、羽生九段がタイトルを奪えば歴史に残る。全人生をかけて戦うに値する」と話していました。
■「令和の王者」藤井五冠
しかし、今の藤井五冠からタイトル戦で4回勝つのは、どんな棋士であれ容易なことではありません。
藤井五冠は羽生九段と入れ替わるように、令和に入ってタイトルの数を着々と増やしています。
3年前、令和2年に史上最年少の17歳11か月で最初のタイトルを獲得。去年、8つあるタイトルのうち5つを持つ「五冠」になりました。
強豪を相手に対局を重ねるタイトル戦でも勝率は8割を超え、連敗はゼロ。これまで11回出場したタイトル戦で、獲得に失敗したことは一度もありません。
来月開幕する棋王戦の挑戦者にも決まり、ことしは「六冠」さらには「七冠」と、保持するタイトルの数をさらに増やす可能性があります。
第1局は、藤井五冠が着実な攻めで羽生九段を投了に追い込みました。
ただ、羽生九段はこれまで「羽生マジック」と呼ばれる逆転の一手を繰り出して、大舞台でも勝ちを収めてきました。
王将戦の七番勝負はこのあと3月にかけて、残る6局の日程が組まれています。
どんな勝負が繰り広げられるのか、将棋ファンならずとも注目の対局が続きます。
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