トルコのエルドアン政権が、先月以来、少数民族クルド人の武装組織に対する軍事作戦を行い、周辺国や国際社会も巻き込んで、緊張が高まっています。出川解説委員です。
Q1:トルコの軍事作戦、背景には何があるのでしょうか。
A1:きっかけは、ちょうど1か月前(11月13日)、トルコのイスタンブールの繁華街で起きた爆弾テロ事件です。子どもを含む6人が犠牲になり、80人以上が負傷しました。エルドアン政権は、トルコからの分離独立を目指しているクルド人の武装組織、PKK(クルド労働者党)による犯行と断定し、報復として、隣国のシリア北部とイラク北部にあるPKKと関連組織の拠点への空爆作戦に踏み切り、180人以上を殺害しました。これに対し、シリア北部からトルコ南部にロケット弾が撃ち込まれ、犠牲者も出たことから、エルドアン大統領は、今度は、シリア北部に地上部隊を送り込むと述べ、緊張が一気に高まっているのです。
Q2:エルドアン大統領が、それほど強硬な姿勢をとるのはなぜですか。
A2:テロ事件がPKKの犯行かどうかについては、疑問の声もあがっていますが、トルコの世論は、この軍事作戦を支持しています。来年6月に、大統領選挙を控えるエルドアン大統領としては、自らの再選のためには、強硬姿勢を示すのが得策と考えているように思います。
PKKの問題は、北欧のスウェーデンとフィンランドが、NATO・北大西洋条約機構への加盟を申請していることにも絡んでいます。
Q3:それは、どういうことですか。
A3:エルドアン大統領は、両国に対し、逃亡中のPKKの活動家らをトルコに送還するよう強く要求しています。NATO加盟には、すべての加盟国の承認が必要で、両国とも、トルコの要求は無視できません。スウェーデン政府は、2日、PKKのメンバーとされるクルド人の男性をトルコに送還しました。クルド人を保護してきた、これまでの政策を大きく変えるものです。
強気の姿勢を崩さないエルドアン大統領、もし、実際にシリアに地上部隊を送り込めば、戦闘の拡大は避けられないだけに、緊張緩和のための関係国の外交努力が求められます。
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