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同性婚訴訟 きょう判決

清永 聡  解説委員

同性どうしの結婚が認められないのは憲法に違反するとして、同性カップルなどが国を訴えている裁判。30日午後、東京地方裁判所で判決が言い渡されます。
同様の集団訴訟は全国5か所で起こされています。憲法違反かどうかの判断は分かれていて、東京地裁の判決が注目されます。

Q:同性カップルの前で裁判官が悩んでいます。

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A:悩んでいるのは、手にしている憲法の判断をどうするかという点です。
原告は30代から60代の男性どうし、女性どうしの同性カップルなどです。主なポイントは2つ。1つは「婚姻の自由」です。
国は「憲法には『両性の合意』と書かれていて、同性婚を想定していない」と主張します。一方原告は「男女に限定した趣旨ではない。婚姻を望む当事者のことだ」などとしています。

Q:もう1つは。

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A:「平等」です。憲法の「法の下の平等」について争われました。各地で同じような訴えが起きていますが、この「法の下の平等」について札幌地裁は去年「差別的な取り扱いだ」として「違憲」、大阪地裁はことし「憲法には違反しない」として「合憲」の判決を出していて、判断が分かれています。

Q:具体的にはどういう不利益があるのでしょう。

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A:税金の配偶者控除を受けられないことや、法律上の配偶者としての相続権がないことなどがあります。裁判で国は「異なる取り扱いをしても不合理ではない」と主張しています。
ただ、このほかにも原告が裁判中にもう1つ、不利益な扱いを受けたことがあったそうです。

Q:それは何でしょうか。

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A:実は原告の男性カップルの1人が倒れて去年、亡くなりました。ところが、原告によるとそのパートナーの男性は、病院で血縁者でないことを理由に医師から説明を拒まれ、病状を直接聞くことができなかったそうです。
このように「絆を否定され、尊厳を傷つけられた」と感じることが裁判にもつながっています。
性的マイノリティーへの理解は徐々に進み、原告弁護団によると「登録パートナーシップ制度」を導入する自治体は200を超えます。一方で、制度の見直しは反対意見もあり進んでいません。司法が憲法上どう判断するか。
東京地裁の判決は30日午後2時に言い渡されます。


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清永 聡  解説委員

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