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風流踊 無形文化遺産登録へ

高橋 俊雄  解説委員

国内各地で伝承されてきた民俗芸能の「風流踊(ふりゅうおどり)」が、北アフリカのモロッコで行われているユネスコの政府間委員会で無形文化遺産に登録される見通しです。

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■風流踊はどんな踊り?
風流踊は衣裳や持ちものに趣向をこらして歌や囃子に合わせて踊る民俗芸能で、岐阜県の郡上踊(ぐじょうおどり)や岩手県の鬼剣舞(おにけんばい)などがあります。
「風流」は「華やか」や「人目をひく」といった意味です。
ユネスコの無形文化遺産は、歴史や風土と結びついた伝統芸能や工芸技術などが対象で、国内ではこれまで、歌舞伎や雅楽、和食や和紙などが登録されています。
今回の風流踊は、2009年に登録された神奈川県の「チャッキラコ」に新たに40件を加えて提案され、24都府県の41件が一括登録される見通しです。

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■担い手の不足に直面
風流踊は地区内で細々と続けられてきたところも多く、過疎化や少子高齢化による担い手不足に悩まされています。さらに、新型コロナウイルスの影響で、練習や本番が十分にできない状況になってしまいました。
鹿児島県いちき串木野市に伝わる「市来の七夕踊」は国の重要無形民俗文化財に指定されていますが、これまでどおりの形で続けることが難しくなっていて、今回の提案の対象には入っていません。

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■地域外の人たちとつながる
今回「十津川の大踊」が登録される奈良県十津川村では、地区ごとに盆踊りが行われているのですが、長年研究を続けている大阪公立大学の中川眞特任教授によりますと、1985年には24地区で行われていたのが、現在は10地区に減っています。
こうした状況の中、盆踊りの練習が大阪市や奈良市の大学で定期的に行われ、保存会のメンバーなどが希望者に踊りを教えています。
大阪では10年前から練習が続けられ、コロナ禍の前までは大学生など40~50人が村の盆踊りに参加していたということです。
また、奈良では今後、月に1回のペースで練習を重ね、来年夏の盆踊りへの参加を目指すことにしています。

ユネスコの政府間委員会は28日から始まり、風流踊の審査は現地時間の30日に行われる予定です。登録によってその価値が広く知られ、継承や普及に向けた取り組みが広がることを期待したいと思います。


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高橋 俊雄  解説委員

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