NHK 解説委員室

これまでの解説記事

ウクライナ情勢に揺れるG20 首脳会議の焦点を解説

安間 英夫  解説委員

ロシアのウクライナ軍事侵攻で世界経済が混乱する中、G20=主要20か国の首脳会議があすからインドネシアのバリ島で開かれます。
会議の焦点について聞きます。

C221114_2.jpg

Q)首脳たちがG20の議場に集まっていますね。
A)
このG20は世界のGDPの合計の8割以上を占めます。
世界で食料やエネルギーの問題が深刻化する中で、国連とは別に世界経済に影響力を持つ国々の枠組みとして重要な役割を果たすことが期待されます。
ところがプーチン大統領は現地入りせず、代わりにラブロフ外相を派遣することになりました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は議長国インドネシアの招待を受け、オンラインで参加する見通しです。

C221114_3.jpg

Q)プーチン大統領はなぜ出席しないのでしょうか。
A)
詳しく説明していませんが、G20と言えば、ロシアがクリミアを併合した2014年には、欧米から厳しい非難が向けられ、プーチン大統領は予定を切り上げ、会議の終了を前に帰国したことがありました。
今回はそれ以上の非難の的となり、ばつの悪い思いをすることを避けたかったのではないでしょうか。

C221114_5.jpg

Q)協議の行方はどうなるのでしょうか。
A)
合意文書をまとめることができるかどうかが最大の焦点です。
ウクライナ侵攻をめぐっては、欧米や日本などがロシアを厳しく非難し、先月国連総会で、ウクライナの4つの州のロシア併合を非難する決議が143か国の賛成で採択されました。
G20では中国とインド、南アフリカが棄権しました。
残りの国々は軍事侵攻や併合には反対しながら、インドネシアのように議長国として議論をまとめなければならない国、ロシアへの制裁に参加している国、制裁に慎重な国もあり、ロシアに対する姿勢は一様ではありません。
こうした構図の中でロシアに厳しい姿勢を目指せば合意形成ができないおそれがある一方、亀裂を避けて合意形成を優先すればロシアに対する表現が弱まってしまう、こうしたジレンマを抱えています。

G20にとって存在意義が問われる局面と言え、世界経済に少しでも前向きな対策を示すことができるのか、あるいは亀裂を印象づけるだけになるのか、注目していく必要があります。


この委員の記事一覧はこちら

安間 英夫  解説委員

こちらもオススメ!