絶滅のおそれがある野生生物の国際取引を規制するワシントン条約。
この締約国会議が、11月14日から25日までの日程で、中米・パナマで開かれます。焦点についてお伝えします。
Q.今回の会議、日本にとって重要なテーマは何になるのでしょうか。
A.一部のサメの国際取引を規制する提案に関心が集まっています。
とくに心配しているのが、このうちの一種、「ヨシキリザメ」の水揚げが盛んな宮城県・気仙沼市の水産関係者です。
ヨシキリザメはサメのうちでも、日本でもっとも漁獲量が多い種です。高級食材として知られるフカヒレが取れ、一部は輸出もされています。フカヒレだけでなく、肉も主に「はんぺん」の材料になります。
気仙沼が全国の水揚げのおよそ8割を占め、地域にとって、とても大事な存在です。
Q.「国際取引を規制する提案」ということですが、この規制というのは具体的にどういう内容なんですか。
A.「附属書Ⅱ」に掲載するという提案です。会議が開かれるパナマに加えて、EU=ヨーロッパ連合などあわせて41か国が共同で提案しました。
附属書Ⅱに掲載されたからといって、国際取引が禁止されるわけではありません。
ですが、輸出にあたって許可書を発給するなどの手続きが必要になり、時間と手間がかかるようになります。
Q.規制が提案されるということは、取りすぎていなくなっているということなんですか。
A.漁業によって大きく減った可能性があるサメとそうではないサメ、両方あるというのが実際です。
国際機関の評価によりますと、ヨシキリザメの状態は「健全」。管理して漁獲すれば、絶滅するような心配はないということです。
しかし、今回、規制を提案した国々は、保護の必要があるサメと似て区別がつかないものもあるとして、ヨシキリザメを含む、あわせて54種を一気に規制すべきだとしています。
これに対し日本政府は、区別は可能なうえ、規制の対象を広げすぎてうまく管理できなくなるなどとして反対しています。
Q.今回の提案はどうなりそうなんでしょうか。
A.附属書に掲載するかどうかの提案は、投票した国の3分の2以上の賛成があれば「採択」されます。今回はEUを含めて賛成する国々が多いことから、「採択されるのではないか」という見方が広がっています。
先ほども紹介したように、仮に掲載されても国内取引は直接関係ありませんし、国際取引も禁止されるわけではなく、手続きを経れば輸出も可能です。
ただ、利用に慎重になる動きが出てくる可能性はあります。
サメ漁は、国際的にはヒレだけを取って海に捨てる「フィニング」という行為が問題になり、不信の目があるのはたしかです。
これまで日本では厳しく管理して操業してきたうえ、肉も有効に活用し、環境団体からも一定の評価を受けています。それだけに、もし、規制されることになったとしても、日本の漁業者は適正な操業を続けて、将来的に規制解除を目指してほしいですし、ワシントン条約の締約国会議でも実態をしっかり評価すべきだと思います。
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