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独首相初の訪中 "中国回帰?"欧州警戒

二村 伸  専門解説委員

ドイツのショルツ首相が4日、新型コロナの感染拡大後G7首脳として初めて中国を訪問します。EUが中国依存からの脱却を進める中での訪中は議論を呼んでいます。

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Q.イラストの習近平国家主席は笑顔で首相の訪問を歓迎していますね。

ショルツ首相は企業の代表を引き連れて中国を訪問し、共産党トップとして異例の3期目に入った習近平国家主席とも会談する予定です。中国はドイツの最大の貿易相手国で、自動車メーカーにとっては世界の販売台数の3割から4割を占める重要な市場です。このためメルケル前首相は毎年のように中国を訪れましたが、後任のショルツ首相は中国偏重を改め、就任後アジア最初の訪問国に日本を選びました。しかし新型コロナとロシアのウクライナ侵攻により落ち込んだ経済を立て直すには中国との関係が欠かせず、つい最近も「中国切り離しは間違いだ」と述べて中国政府を喜ばせました。

Q. EU各国はショルツ首相の訪中をどのように見ているのですか。

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EUにとって中国はパートナーと同時に競合相手でありライバルです。近年は人権問題や南シナ海などへの海洋進出に対する批判を強め、中国と距離を置く国が増えています。
さらにロシアのウクライナ侵攻を機に一国への過度の依存の危うさが浮き彫りとなり、先月開かれたEU首脳会議ではロシアと同じく権威主義的な中国に資源調達で依存しないことを確認しました。その直後の訪中だけに「人権や安全保障より経済優先だ」、「EUの結束を乱す」などと批判の声が上がっています。

Q.ドイツ国内ではどう受け止めているのでしょうか。

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産業界からは訪問を支持する声も聞かれますが、批判も強まっています。ドイツでは安全保障への影響や技術流出への懸念から中国企業による買収を規制してきましたが、訪中を前にショルツ首相は、ドイツ最大の港である北部のハンブルク港のターミナルへの中国国有企業による出資計画をめぐり地元自治体や連立政権内の反対を押し切って承認に踏み切りました。中国に対してどこまで踏み込んだ話をするのか、国内外の厳しい目が注がれています。


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二村 伸  専門解説委員

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