NHK 解説委員室

これまでの解説記事

プーチン大統領に異例の苦言 中央アジア

安間 英夫  解説委員

ロシアによるウクライナ軍事侵攻は今月で8か月となりました。
同じ旧ソビエトの構成国だった中央アジアの国々には、ロシアに対する姿勢に変化が見られるようです。

C221026_1.jpg

Q1)このイラストはプーチン大統領が出席する会議ですか。
A1)
今月行われたロシアと中央アジア5か国の首脳会議です。
この席でタジキスタンのラフモン大統領が「われわれに敬意を払ってほしい」と発言しました。
タジキスタンの人口は900万。経済や安全保障でロシアに多くを頼る国ですが、メディアを前に、プーチン大統領に耳の痛い異例の指摘をして注文をつけたのです。

C221026_2.jpg

Q2)どうしてこのような発言が出てきたのですか。
A2)
ロシアのウクライナ軍事侵攻が背景にあると思います。
プーチン大統領はかねて旧ソビエトをロシアの勢力圏だと公言してきました。
ウクライナ侵攻はその延長線上にあります。
ラフモン大統領の発言を読み解きますと、まずプーチン大統領は中央アジアをソビエト時代のようにひとつの地方として格下とみているのではないか、そして、ロシアとは対等な国どうしで共存共栄を図りたい、そうした思いを強め、何も言わずにいられなかったと考えられます。

C221026_3.jpg

Q3)こうした発言はタジキスタンだけだったのでしょうか。
A3)
カザフスタンのトカエフ大統領も、旧ソビエトの国境問題は「平和的な手段でのみ解決されるべきだ」と述べました。
カザフスタンは中央アジアで最大の国で、ロシア系住民が20%を占め、ロシアとは7000キロ以上の国境を接しています。
ウクライナ侵攻はひとごとではなく、ロシア系住民をめぐるトラブルなど、いざとなったらロシアが長い国境を越えて侵攻してくるのではないかと、警戒心を拭い去ることはできません。

C221026_4.jpg

Q4)ロシアの求心力が低下しているようですね。
A4)
はい。ロシアにとって中央アジアは重要な同盟国、あるいはパートナーと位置づけられてきました。
それがウクライナ侵攻で、中央アジアはロシアに対してつかず離れずの姿勢をとるようになっています。
ロシアの膝元の国々の姿勢の変化がウクライナ情勢に影響を及ぼすのかどうか、注目していく必要がありそうです。


この委員の記事一覧はこちら

安間 英夫  解説委員

こちらもオススメ!