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安倍元首相追悼演説 "仇"への思いは

曽我 英弘  解説委員

国会では25日、安倍元首相への追悼演説が行われる予定だ。演説に込める思いや、今後に与える影響について考える。

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演説は野田元首相が担うが、2人はどのような関係だったのだろうか。野田氏と安倍氏と言えば今から10年前、2012年の党首討論で衆議院の解散をめぐる緊迫したやり取りを記憶している方も少なくないと思う。その後の選挙で野田氏は安倍氏に敗れ政権を明け渡した経緯から、歴史観などで共通する部分があることは認めつつ、最近も「仇のような政敵」と自らのブログに書き込んでいる。このため演説も個人的な信頼関係や知られざるエピソードを明かすというよりむしろ、選挙中の銃撃という非業な最期を遂げたことに弔意を示し、政権を率いた8年8か月に敬意を示しつつも、暴力を強く非難し、言論の府である国会が議論によって様々な問題の解決にあたる決意を中心に訴えるものとみられる。

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岸田内閣の支持率が低迷し、山際経済再生相が24日、辞任するなかでの追悼演説となる。衆議院が党派を超えて弔意を示すことで政権への今の逆風を少しでもかわし、物価高対策や旧統一教会の被害者救済などで野党側の協力も狙う政府与党だっただけに、このタイミングでの閣僚の辞任は痛手であることは間違いない。これに対し立憲民主党などは、「国葬」に反対しつつ演説には応じ、反対一辺倒ではない姿勢を示すことで一連の対応にひと区切りをつけ、今後は岸田首相の任命責任も含めさらに追及を強めるものとみられる。

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追悼演説をめぐる与野党の思惑が異なる中で、野田氏が安倍氏から「悪夢」とまで言われた旧民主党政権最後の首相としてどのような言葉で語り掛けるのか。その内容次第では世論の動向に微妙な影響を与える可能性もあり、演説を与野党が固唾をのんで見守ることになりそうだ。

(曽我 英弘 解説委員)


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