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旧統一教会 初の『質問権』行使へ 専門家会議はじまる

木村 祥子  解説委員

旧統一教会をめぐる「質問権」行使の問題。
文化庁は10月25日、専門家会議を開き、「質問権」を行使する際の基本的な考え方や基準を検討することになりました。
宗教法人の解散命令請求につながる可能性もある「質問権」を使った調査とはどのようなものなのか、解説します。

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Q:連日、ニュースで「質問権」という言葉が取り上げられていますね。

A:「質問権」とは宗教法人に法令違反などが疑われた場合、文部科学省などが運営実態などについて報告を求めたり、質問したりすることができるものです。
旧統一教会をめぐる高額な献金やいわゆる「霊感商法」の問題を受けて、岸田総理大臣は永岡文部科学大臣に対し「質問権」の行使による調査を実施するように指示しました。
ただ、「質問権」を使った調査はこれまで前例がありません。
そこで文部科学省の外局である文化庁は今回、質問権の乱用や恣意(しい)的な運用を防ぐため「客観的な基準が必要だ」として、宗教界や大学教授らでつくる「専門家会議」を開くことにしたのです。
文化庁は信教の自由の保障などを踏まえ、慎重に検討を進める方針です。

Q:専門家会議が終わるとどのような手続きになりますか?

A:「宗教法人審議会」というものが開かれます。メンバーは専門家会議と同じです。
文化庁は専門家会議での議論を受けて質問の素案を作ります。そして審議会で意見を聞くという流れになっています。
例えば、「これまでの裁判で、宗教法人の組織的な不法行為などを認める判決が出ていますが、どんな事実関係ですか?」とか「『組織的な不法行為をしていません』と言いますが、同じようなトラブルが全国で起こっているのはなぜですか」などといった質問が想定されます。いずれにしても詳細は今後、練っていくということです。
そして審議会を通過すると、「質問権」の行使という流れになります。

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Q:永岡大臣は「年内のできるだけ早いうちに進めたい」と話していますよね。

A:ただ、スムーズにいくかは不透明です。
速やかに「質問権」を行使するためには、審議会において専門的な観点からスピーディーに検討を行い、同意を得る必要があります。
審議の行方も今後の焦点の1つになると思います。
また、課題もあります。

Q:どのようなことですか。

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A:「質問権」を使った調査は警察の家宅捜索のような強制力はありません。
宗教法人の施設に入るには代表役員などの同意が必要です。
永岡大臣は「手続きの途中でも解散命令を請求するに足る事実関係を把握した場合には、速やかに裁判所に対して請求を検討していく」としています。
ただ最終的に解散命令の可否を判断するのは裁判所になります。
初めての「質問権」がどのように行使されるのか推移を見守っていきたいと思います。

(木村 祥子 解説委員)


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