中東のイエメンの内戦をめぐって、今年4月から続いてきた、政府側と反政府勢力の停戦合意が、今月2日、期限切れとなり、戦闘が再燃することが心配されています。
出川解説委員です。
Q1:
イエメンの内戦については、いままでもお伝えしてきましたが、ようやく実現した停戦が途絶えるおそれがあるということなのですね。
A1:
その通りです。イエメンでは、サウジアラビアなどの支援を受ける政府側と、イランの支援を受ける反政府勢力の「フーシ派」との間で、泥沼の内戦が7年以上にわたって続いています。(フーシというのは、指導者の名前です。)食糧不足で大勢の子どもたちが命を落とすなど、極めて深刻な人道危機に陥っていました。ようやく今年4月、国連の仲介によって、2か月間の停戦合意が成立し、その後、6月と8月に、それぞれ2か月間延長されました。しかし、停戦合意をさらに延長するための交渉が不調に終わり、期限切れとなったのです。
Q2:
停戦を延長するための交渉がうまくいかなかったのはなぜですか。
A2:
仲介役の国連が調停案を示し、政府側は基本的に受け入れる姿勢でしたが、フーシ派が拒否したためです。フーシ派は、自分たちが支配する地域の公務員に給料を払うことや、空港や港の封鎖を解除することを、停戦延長の条件として、強く要求しましたが、これらの要求が受け入れられず、国連の提案を蹴ったと見られます。
Q3:
戦闘が再燃した場合、具体的にどんな影響が出るでしょうか。
A3:
停戦合意のおかげで、この半年間、散発的なレベルにとどまっていた戦闘や攻撃が、再び激しくなりますと、人道危機の悪化は避けられません。乳幼児を中心に非常に多くの命が失われることが心配されます。また、フーシ派は、政府側を支援するサウジアラビアやアラブ首長国連邦の石油施設やタンカーを攻撃すると、ほのめかしています。もし、実際に攻撃した場合、エネルギー価格のいっそうの高騰を招いて、私たちの暮らしにも影響が出るでしょう。
停戦合意を復活させるため、国連や関係国が、内戦の両当事者を交渉のテーブルに着かせ、説得にあたることが、何よりも重要だと思います。
(出川 展恒 解説委員)
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