国連総会の一般討論演説が始まり、各国首脳らのトップを切って、ブラジルのボルソナロ大統領が登壇しました。髙橋解説委員とお伝えします。
Q1)
けさのイラストは、何だか映画のフィルムみたいですね?
A1)
一般討論演説は、ブラジルが初日のファーストカットで登場するのが、長年の慣例です。通常ですと、次はアメリカ。しかし、バイデン大統領は、前日イギリスでエリザベス女王の国葬に参列したため、今回は2日目に演説します。ボルソナロ大統領も同じ国葬に参列したので、順番を遅らせるかと思いきや、ニューヨークに駆けつけて、今回も討論の口火を切りました。
Q2)
ブラジルが国連を重視しているからですか?
A2)
それもあるのでしょうが、別の理由もありそうです。自らの再選をめざす大統領選挙の1回目の投票が、来月2日に迫っているからです。右派のボルソナロ大統領はいま、左派のルーラ元大統領に大きくリードされています。そこで“外交舞台での顔”を有権者に印象づけ、巻き返しのきっかけをつかみたかったのかも知れません。
ただ、もうひとつ別の理由でも、ボルソナロ大統領は、内外から注目を浴びています。
Q3)
どんな理由ですか?
A3)
敗北したら「選挙に不正があった」と主張して結果を受け入れない可能性があるのです。“熱帯のトランプ”の異名をとるボルソナロ氏は、2年前のアメリカ大統領選挙でも、「不正があった」とするトランプ前大統領の主張に一時同調したことがありました。バイデン大統領としては、そうした根拠のない主張は到底受け入れられません。
ただ、ブラジルが仮に政権交代したら、アメリカもいっそう難しい外交を迫られることになりそうです。
Q4)
どうしてですか?
A4)
中南米では、ここ数年、経済格差の拡大への不満などから、アメリカと一線を画す左派政権が相次いで誕生しているからです。こちらのピンク色の国々です。アメリカにとってライバルの中国も、そうした左派政権の国々と、関係をますます強化しています。
はたして“21世紀の大国”の未来は誰が舵取りを担うのか?来月のブラジル大統領選挙の行方に、アメリカも重大な関心を寄せています。
(髙橋 祐介 解説委員)
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