歌舞伎や文楽など伝統芸能の拠点、東京の国立劇場が、老朽化にともなう建て替えのため来年10月でいったん閉まることになり、今月、「さよなら公演」が始まりました。
■ことしで56年
国立劇場は昭和41年=1966年11月に東京・千代田区に開場しました。これまで56年にわたって歌舞伎や文楽、舞踊、雅楽など、さまざまな伝統芸能の主催公演を行い、ことし3月までにのべ1850万人以上が足を運んでいます。
また、歌舞伎俳優や文楽の人形遣いなどの養成研修にも力を入れ、担い手の育成に大きな役割を果たしてきました。
ただ、半世紀以上がたって施設の老朽化が進み、隣接する国立演芸場も含め、全面建て替えによる再整備を行うことになったのです。
■1年2か月の「さよなら公演」
初代国立劇場の「さよなら公演」は、今月3日に始まった文楽の公演で幕を開け、来年10月まで1年2か月にわたって行われます。
今月23日には日本舞踊の名作を紹介する1回目の公演が行われるほか、来月からは歌舞伎の公演も始まります。
これまでの歴史を凝縮して振り返るとともに、若手を起用するなどして今後につながる公演にしたいとしています。
■6年かけて再整備
そのあと6年かけて再整備が行われ、新たな劇場がオープンするのは2029年秋。ホテルやレストランが併設されるほか、伝統芸能を体験できる参加型の展示などが設けられる予定です。
劇場を運営する日本芸術文化振興会は、公演を見に来ない人も気軽に立ち寄れる「にぎわいのある文化観光の拠点」にしたい考えです。
再整備が行われる間、新国立劇場や国立能楽堂などほかの施設を使って公演を行う予定で、研修も場所を変えて続けるということです。
再び幕が上がったときにこれまで以上のお客さんに来てもらい、日本の伝統芸能を未来につないでいく。そのためには、この6年に及ぶ外での公演を新たなファンを増やすチャンスと捉え、さまざまな取り組みを進めていくことが、とても大切になると思います。
(高橋 俊雄 解説委員)
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