政府は9日、追加の物価高騰対策を決定します。このうち食料品の対策についてお伝えします。
Q)岸田総理大臣がしているのは、モグラたたきですか。
A)「高騰する食料品」というモグラをたたくために、四苦八苦している様子です。
今回の対策、柱の一つが、政府が売り渡す輸入小麦価格の据え置きです。
海外からの小麦のほとんどは政府が一括して買い付け、製粉会社などに売っています。
価格は半年ごとに改定されます。政府はこれを10月から来年3月までの半年間、据え置く方針です。
算定の前提となる、ことし3月から9月にかけての輸入小麦の価格は、前の半年に比べて2割ほど上がっているんですが、これを抑えるということです。
Q)なぜ、対策の柱が小麦なのでしょうか?
A)パンやめんなど、さまざまな食べ物の材料になり、影響が大きいことが背景にあります。
「野村総合研究所」の試算によると、2割程度の値上がりが半年間、抑えられるとした場合、1人あたり、およそ5600円の負担軽減になるということです。
Q)5600円の負担軽減ですか。消費者としてはうれしい。
A)ただ、農業関係者からは輸入小麦が高いなら、本来、国産のコメ消費を拡大する絶好の機会なのに、という声が出ています。コメの価格は、長引く消費の低迷の影響で落ち着いているからです。
さらに小麦だけ据え置いても効果は限られています。食用油、砂糖、それにハムやソーセージなどの加工食品に至るまで値上がりは広がっています。「帝国データバンク」のまとめでは、10月、値上げが予定されているのは6500品目以上に上るということです。たたけどたたけどモグラが出てくるような状況です。
外国為替市場では円相場が1ドル=140円台まで円安が進み、輸入に依存する食料品はさらに高騰する可能性が高まっています。
小手先の対応ではなく、持続的に賃金を上げ、物価の上昇に耐えられる環境をどう整えるか、そこにこそ政府の真価が問われています。
(佐藤 庸介 解説委員)
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