老朽化が進むマンションの建て替えなどを円滑に進めようと、国の法制審議会でいわゆる「マンション法」の見直しに向けた議論が行われることになりました。検討されるのはどういう点か。担当は清永聡解説委員です。
Q:古いマンションで、建て替えを希望している人がいます。
A:ただし今の法律では、建て替えの場合所有者の5分の4の同意が必要などの条件があります。
Q:このイラストだと反対しているのは1軒だけです。もう1軒は所有者不明になっていますね。これで建て替えできませんか?
A:所有者不明は決議では反対と同様に扱われます。つまりこのままでは5軒のうち2軒が賛成してないので5分の4に届かず、建て替えができないことになります。ちなみに建物・敷地の一括売却などは、全員の同意が必要です。たとえ反対の人を説得しても、所有者不明が1軒でもあれば、売却も難しいことになります。
Q:困りましたね。
A:今回議論されるポイントの1つは、建て替えなどで必要な同意の割合を今より引き下げられないか、という点です。単純に引き下げる意見や、大規模な地震に備えて、まずは耐震性が低い建物を引き下げの対象にしてはどうかという意見もあります。
もう1つはこうした所有者不明、例えば1人暮らしのお年寄りが亡くなって、相続人がどこにいるか分からない場合は、決議の母数から除外できないか、といった意見も出ています。
Q:建て替えも取り壊しもできないままだと、ますます老朽化して、管理も行き届かなくなりますね。
A:この問題、マンションの「2つの老い」とも言われます。建物だけでなく、入居者も高齢化するためです。高齢世帯ばかりになれば、管理組合の役員の確保も難しくなります。また、所有者不明の部屋が増えると、管理費なども集めることができず、最後には「管理不全」の状態に陥ることも懸念されます。
一方で、高齢になって建て替えるのは負担が大きい、いまのまま建て替えず「ついの住みか」にしたい、という方もいるでしょう。議論ではこうした人への配慮も検討が必要です。
築40年以上のマンションは20年後にはいまの3、7倍に増えるという推計もあります。建物の管理や再生を円滑にすることと、住み続けたい人の権利をどう両立させるかが、議論の焦点です。
(清永 聡 解説委員)
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