相次ぐ不祥事により辞意を表明したイギリスのジョンソン首相の後任を決める与党・保守党の党首選挙の結果が5日に発表されます。ダウニング街10番地の新しい主は誰になるのでしょうか。
Q.保守党の党首がそのまま首相になるのですね。
イギリスでは総選挙で勝った与党の党首がエリザベス女王から首相に任命される仕組みで、5日発表される保守党の新しい党首が、6日エリザベス女王に謁見し、組閣を要請され新政権が発足します。両親が東アフリカから移住したインド系のリシ・スナク前財務相が勝てばイギリス初のアジア系の首相となります。対するエリザベス・トラス外相は、「鉄の女」と呼ばれたサッチャー元首相のスタイルを踏襲し、イギリスで3人目の女性首相をめざしています。保守党下院議員による5回の投票はすべてスナク氏がトップでしたが、党員を対象とした世論調査ではトラス氏が30ポイント近い差をつけて優勢です。
Q.トラス氏がリードしている要因は何でしょうか。
当初は次期首相の有力候補とは見られていなかったのですが、ジョンソン首相に近く、外相としてウクライナに侵攻したロシアに強硬な姿勢をとり、ウクライナ支援を強く訴えたことが注目されました。減税を公約に掲げたことも逆転につながったようです。保守党内では今もジョンソン首相への支持が根強く、首相に反旗を翻し退陣に追い込んだスナク氏を「裏切者」と非難する声が強まったこともトラス氏優位に働きました。
Q.ジョンソン首相の退陣でイギリスは変わるのでしょうか。
基本的には大きな変化はなく、外交でも中国とロシアに強硬な姿勢が続くものと見られます。ただ、どちらが首相になっても政権運営は容易でなく、早くも再来年の総選挙を不安視する声も聞かれます。7月の消費者物価指数は前年同月比で10.1%と40年ぶりの高い水準を記録し、新型コロナとロシアの軍事侵攻で落ち込んだ経済を立て直せるか、また、ジョンソン首相のようなカリスマ性がないだけに党や国をまとめきれるか、指導力が問われそうです。6年間で3人の首相が任期中に辞任するのはイギリスでは異例のことで、政治の信頼を取り戻すという難しい任務が待ち受けています。
(二村 伸 専門解説委員)
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