ロシアがウクライナでの軍事侵攻を続ける中、極東地域などロシア東部で大規模軍事演習「ボストーク」が今週後半から始まります。津屋尚解説委員にききます。
Q:どんな軍事演習ですか?
A:ボストークはロシア語で「東」を意味します。4年に一度の大規模演習です。
北方領土の国後島や択捉島やロシア東部の演習場、それに日本海・オホーツク海などで、9月1日から7日まで行われます。演習には、中国やベラルーシなども参加します。ロシアとしては、ウクライナに軍事侵攻を続ける中でも、極東の有事に対応する十分な“余力”があると示そうとしているのだと思います。
Q:でも本当に余力はあるんですか?
A:かなり怪しいと思います。ロシア軍はウクライナでの戦争で、今回演習が行われる東部から派遣された兵士にも数多くの戦死者が出ています。ロシアは深刻な兵員不足に陥っていますが、プーチン大統領は、最高指揮官としての失敗が明らかになるのを避けたいのか、兵員不足を認めようとはしません。前回4年前は、総兵力の実に3分の1にあたる30万人が参加して、ロシアは大々的にその規模をアピールしたんですが、今回は演習開始直前になって参加人数がようやく発表され、その数は「5万人」と大幅に減りました。特に地上兵力については、そもそも大掛かりな演習を行うこと自体かなり無理があると言わざるをえませんが、実際どのような演習を行うのか、あるいは行えるのか。それによって、プーチン政権の”主張”と“現実”とのズレがより鮮明になるのではないでしょうか。
Q:演習が北方領土で行われるのも気になりますね?
A:前回4年前は日本との関係に配慮して、北方領土での演習は見送られたんですが、今回は正反対です。対日批判が高まりやすい9月3日の「対日戦勝記念日」と重なる形で日程が組まれました。そこにはウクライナ侵攻を強く非難する日本やその同盟国アメリカを強くけん制しようという意図がうかがえます。ウクライナ侵攻が続く限り、日ロ関係のさらなる悪化は避けられそうにありません。
(津屋 尚 解説委員)
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