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世界中が注目!米FRB議長は何を語る?

櫻井 玲子  解説委員

全米有数の避暑地・ジャクソンホールで開かれる会合でアメリカの中央銀行にあたるFRB・連邦準備制度理事会のトップが行なう講演に大きな関心が寄せられています。櫻井解説委員です。

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Q FRBのトップをつとめるパウエル議長、今回はシェフの姿で登場ですか。
A はい、毎年この時期に開かれる会合には、世界各国の中央銀行関係者が集まるのですが、パウエル議長がアメリカ経済を「どう料理するか」が特に、注目されています。
というのも、これまで急激な物価上昇に悩まされてきたアメリカでは、FRBが一気に利上げをして金融を引き締め、景気の過熱を抑えようとしてきました。
しかしここにきて、その副作用もあり、アメリカは2期連続のマイナス成長を記録。
住宅市場にも陰りがみえ、一転、景気の後退が心配されています。
このため、一部の市場関係者からは、FRBが景気を冷やしすぎないよう、利上げのペースを落とすのではという見方もあり、議長の見解が問われています。

Q 議長はどのような見通しを示すのでしょうね。

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A 景気の先行きは心配な一方で、物価は依然として前の年にくらべ8パーセントもあがっていて、FRBが目指す2パーセントの目標にはほど遠い状況です。
このため、パウエル議長としては、物価の上昇が峠を越えたという証拠は、得られていないこと。経済情勢の変化にあわせて柔軟に対応はするが、今はインフレとの闘いを続けるしかないことを、強調するとみられます。
そしてこの講演が注目される理由が、もう一つあります。
パウエル議長自身がこの講演で名誉を挽回できるかが、かかっているからです。

Q 名誉挽回?どういうことですか?

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A 実は議長の去年の講演は大失敗だった、と批判されているんです。
議長は当時、物価の上昇は「一時的な現象である可能性が高い」と語ったにもかかわらず、その後、インフレは予想以上に加速。FRBは急な利上げを迫られました。
その結果、ドル高円安も急激にすすみ、日本にも、大きな影響を及ぼしました。
ことしこそ、今後の道筋を正しく示し、世界中の金融関係者を唸らせることはできるのか。講演は日本時間26日午後11時からの予定です。

(櫻井 玲子 解説委員)


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