日本の「障害者権利条約」の取り組みに対する国連の初めての審査が、昨日・今日とスイスのジュネーブで行われています。竹内哲哉解説委員に聞きます。
Q.こちらは建設現場ですか?
A.この審査が「建設的対話」と呼ばれていることから、審査を建設現場に例えてみました。設計図を見ているのが国連の権利委員会。条約を元に日本の政策を作っているのが日本政府。その様子を障害のある当事者が見守っています。
Q.障害者権利条約、改めてどういう条約でしょうか?
A.障害のある人たちが差別を受けることなく、好きな場所で暮らし、学んだり働いたりできることなどを目的とした条約です。日本は2014年に批准。審査は条約締結国に定められた手続きで、新型コロナの影響もあって延期されていましたが、今回初めて受けることになりました。
Q.建物はまだ建築途中ですか?
A.審査は、この建築途中の穴をどうやって埋めていくかを考え、場合によっては設計図よりもよいものにしていくことを図るものです。
審査の前には、政府は条文と照らし合わせて、政策の実行についての「報告書」を。一方、障害者団体や日弁連などの民間団体は実際の「課題」や「改善点」をまとめた「パラレルレポート」を、それぞれ権利委員会に提出しています。昨日からの審査では、これらの資料をもとに権利委員会の専門家が政府に質問。政府が回答を行っています。また内閣府の障害者政策委員会のメンバーである障害当事者も発言が求められました。
Q.どのような課題が取り上げられていますか?
A.昨日は「障害のある人が施設から出て地域で暮らす」ことや、「精神障害者の強制入院の禁止」があげられました。今日は障害のある子とない子が共に学ぶ「インクルーシブ教育」などが議題になると見られます。
Q.この審査、どういったことにつながるのでしょうか。
A.最終的には日本の良い点と改善点が「総括所見」としてまとめられ、9月中旬までには改善すべき点は勧告として出される見通しです。拘束力はありませんが対応は求められます。今回の審査を通して国連からどのような改善を求められるのか。政府はどのように対応するのか。私たちも注意深く見守ることが必要だと思います。
(竹内 哲哉 解説委員)
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