6日の広島原爆の日、そして明日9日は長崎の原爆の日です。広島、長崎は何を伝えようとしているのでしょうか 石川一洋専門解説委員に聞きます。
Q戦争と原爆の日、深刻ですね。
A核兵器大国ロシアによるウクライナへの軍事侵攻です。プーチン大統領は核抑止力に即応体制をとるよう命じています。ロシアのいわば核の威嚇の中で、日本を含めて核抑止で安全保障を強化するという考え方が強まっています。
これに対して広島、そして明日の長崎での平和宣言でも、核抑止力に依存するのは、核兵器国が戦争を始めたことでむしろ危険だとして、「核兵器はなくすしかない」と正面から訴えています。
Q平和の鳩が飛び立っています。
A戦争への強い危機感です。
広島の松井市長は、平和宣言の中で、ロシアの文豪トルストイの「他人の幸福の犠牲の上に自らの幸福を築いてはならない」という言葉を引用しました。若い頃は戦争にも参加したトルストイですが、晩年は徹底した平和主義者、人道主義者となり、日露戦争にもロシア国内で数少ない戦争反対の声をあげました。あえてロシアの文豪トルストイの言葉を引用することで、戦争を行う国と作家という個人を区別するとともに、「戦争をやめろ」というメッセージを広島からロシアに伝えたかったのだと思います。
Qロシアはどう反応していますか?
A今回広島と長崎は、戦争当事者のロシアを招待することをやめました。核保有国に被爆地の声を伝えることこそ意味があるのですが、ロシアを招待することで混乱を招きたくないという苦渋の決定です。これに対してロシアのガルージン駐日大使は事前に広島を訪問して原爆犠牲者を慰霊するとともに、ウクライナで核兵器を使用することはないと強調しました。しかしウクライナに侵攻する計画はないと断言しておきながら、ロシアはウクライナに軍事侵攻をして、子供を含む一般市民が今も殺されています。
トルストイは同じ格言の中で、「他人の幸福の中にこそ自らの幸福もあるのだ」と述べています。今のロシア政府は聞く耳は持たないかもしれませんが、平和を求める広島長崎の訴えが、ロシアの市民には届いてほしいですね。
(石川 一洋 専門解説委員)
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