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ロシアが宇宙ステーションからの離脱を表明 運用延長への影響は? 月面探査はどうなる?

水野 倫之  解説委員

日本も参加する国際宇宙ステーションについて、ロシアの宇宙機関が離脱すると表明し、運用への影響が懸念されている。水野倫之解説委員の解説。

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イラスト、プーチン大統領が飛行士が離脱できるようはしごかけようとしているイメージにしてみたが、ロシアが宇宙分野でも欧米や日本への揺さぶりを強めてきているということだと思う。
ロシアの宇宙機関のトップは先週、「2024年以降に離脱すると決めた」と表明、プーチン大統領も了承。
宇宙ステーションは冷戦終結後にロシアも加わり国際協力の象徴となってきたが、運用への影響が懸念。

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ロシアが離脱するとどんな影響がでるか。
ステーションの現在の運用期限は2024年までだが、アメリカは2030年までの延長を呼び掛けている。
ただステーションの姿勢制御はロシアが担っているし、設備の半分近くはロシアのもので切り離すわけにもいかず、離脱すれば運用延長が難しくなる可能性が。
またアメリカは月面探査に向けてステーションで技術実証する計画なので、月探査に影響が出る可能性も。

日本も月探査に参加する計画で、物資補給船を開発したり、新たな飛行士の採用試験の真っ最中だが、その活躍の場が確保できないおそれも。

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影響は大きいが、離脱と決まったわけではない。
各国ともロシアから正式に離脱の通告を受けていないし、ロシアも離脱は2024年‘以降’とぼかしていて、宇宙機関のトップもその後、離脱の具体的時期はまだ決まっていないとも述べている。
またロシアは独自にステーションを作るとしているが資金難で不透明で、離脱すればロシアも宇宙の活動拠点がなくなって不都合なはず。
こうした揺さぶりは今後も続くと思う。
ただステーションは今やロシアと協力できる数少ない場なので、日本を含む各国がロシア側との話し合いの場を持ち、国際協力が続けられる道を探り続けてほしい。

(水野 倫之 解説委員)


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