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欧州熱波 ウクライナ危機で脱炭素化ピンチ

二村 伸  解説委員

日本はじめ世界各地で猛暑が続いています。とくにヨーロッパは猛烈な熱波に見舞われ被害が広がっています。そうした中で今、異常気象を防ぐための戦略の見直しを迫られています。

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Q.ヨーロッパは日本より涼しい印象をもっていましたが暑いのですね。

イギリスは7月の最高気温が平均20度ほど、ロンドンでも23度ですが、19日に観測史上初めて40度をこえ、ロンドンのヒースロー空港では40.2度に達しました。高温や乾燥が原因と見られる火事が相次ぎ、線路に異常が起きて電車が運休したり学校が休校になったりしました。フランスのパリもこの日40.5度を記録しました。今月半ばにはポルトガルで47度、スペインで45度を超え、世界保健機関によりますとこの2か国だけで先週末までに高齢者を中心にあわせて1700人が熱中症などで亡くなりました。さらにヨーロッパ各地で干ばつにより農作物が枯れ、大規模な山火事が起きています。

Q.なぜこんなに気温が上がったのでしょうか?

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偏西風が蛇行し、北アフリカの熱波が北上したためと見られます。世界気象機関は「気候変動が原因でこうした熱波が頻繁に起きるようになり、高齢者の死亡が増えることが予想される」と警告しています。異常気象を防ぐため地球の温度の上昇を防ぐことが国際社会の喫緊の課題ですが、ロシアのウクライナ侵攻が気候変動対策の障害となっています。

Q.障害とはどういうことですか?

EUは2050年までの脱炭素社会の実現をめざし、ドイツなどは30年までに石炭火力を廃止する方針です。ただ脱石炭は天然ガスの活用が前提です。ところがロシアの軍事侵攻後、ロシアからヨーロッパ各国への天然ガスの供給が減ったため石炭火力発電所を再稼働させたり、停止予定だった発電所の操業を継続させたりする国が相次いでいます。こうした化石燃料への回帰が温暖化に拍車をかけています。

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この冬にはエネルギー不足がさらに深刻化することが予想され、より多くの化石燃料に頼らざるを得ないようです。ロシアのウクライナ侵攻は脱炭素化への戦略の見直しを迫り、人の命ばかりでなく地球の未来をも脅かしています。

(二村 伸 解説委員)

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