NHK 解説委員室

これまでの解説記事

どうなるロシアのガス供給

二村 伸  解説委員

ロシアがパイプラインによるドイツへの天然ガスの供給を停止していた問題で、ドイツの企業は定期点検が終わる21日に供給が再開されるという見通しを示しました。供給は全面的に再開されるのでしょうか。

k220721_01.jpg

Q.プーチン大統領はバルブを開けるのでしょうか。

バルブを開けたとしても、十分な量なのか、いつまた供給を止めるかわからず、ロシアの揺さぶりは今後も続きそうです。ロシアは定期点検を理由に今月11日にドイツへのガスの供給を停止し、先週には「不可抗力により供給を保証できない」と通告しました。ドイツ政府は点検終了後も供給が止められる可能性があるとして「経済的な攻撃だ」と批判を強めていました。プーチン大統領が「義務は果たす」と述べ、ドイツ国内でガスを供給する企業は再開される見通しだと発表しましたが、ドイツ政府はいぜん警戒を強めています。

Q.ガスが止まれば.影響は大きいでしょうね。

k220721_02.jpg

ドイツはロシアのウクライナ侵攻前は、天然ガスの輸入の55%をロシアに依存していましたが、制裁の一環として2つめの海底パイプライン「ノルドストリーム2」の完成後も稼働を認めず、ロシアへの依存度を4月時点で35%まで減らしました。
ウクライナのゼレンスキー大統領はさらなる制裁の強化を求めていますが、ドイツにとっては既存の「ノルドストリーム」によるガスの供給が不可欠です。ガスが止まれば鉄鋼や化学などの製造業への影響が大きく、景気の後退が避けられないからです。この冬の家庭の暖房用の燃料不足も懸念されます。全面制裁に踏み切れないドイツの足元を見透かしてロシアはエネルギーを武器に揺さぶりをかけているのです。

Q.対応策はないのでしょうか。

k220721_03.jpg

ロシア以外の国からタンカーでLNG・液化天然ガスを輸入するため備蓄用の施設の建設を急いでいますが、完成には時間がかかります。ドイツ政府は先月、ガスの供給に関する警戒レベルを3段階中2番目の「警報」に引き上げ、国民や企業にガスの節約を求めました。ロシアのガスが完全に止まれば最高度の「緊急事態」に引き上げる可能性があり、そうなればガスの供給が配給制となり、政府が価格の決定に介入することになります。さらに火力発電だけでなく、年末までに停止することになっている原子力発電所の稼働延長についても議論が起きています。先行きが不透明な中で、ヨーロッパ各国はロシアに対して結束を維持できるか、試練に立たされています。

(二村 伸 解説委員)

関連記事