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ロシア・イラン・トルコ 3カ国首脳会談の焦点は?

出川 展恒  解説委員

「イラスト解説・ここに注目」です。
ウクライナでの戦争が続く中、ロシアのプーチン大統領、トルコのエルドアン大統領が、19日、イランの首都テヘランを訪れ、ライシ大統領も交えて、3カ国の首脳会談を行います。その狙いや焦点について、出川解説委員です。

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Q1:

3カ国の首脳が、イランに集まるのはなぜでしょうか。

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A1:

この3カ国は、以前から、シリアの内戦を終わらせるため、連携してきました。その枠組みでの会談ですが、なかなか進展は望めない状況で、「なぜ、今なのか?」という疑問も出てきます。ウクライナでの戦争を抱えるプーチン大統領が、あえて、イランまで足を運ぶのは、欧米諸国からの非難と制裁にさらされる中、同じように、欧米の制裁を受けるイランや、トルコとの連携をアピールし、欧米をけん制する思惑があると思います。アメリカのバイデン大統領が、先週、イスラエルやサウジアラビアを訪問し、対イラン包囲網の強化を図った直後というタイミングも重要な要素です。

Q2:

具体的に、どんなことが話し合われるでしょうか。

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A2:

3カ国の首脳会談の前に、ロシアとイラン、それに、ロシアとトルコの2国間の会談も行われ、それぞれ、ウクライナ情勢に関する問題がテーマとなりそうです。前者では、両国の関係強化、とくに、イランがロシアに対し、数百機の無人機を供与する計画や、貿易やエネルギー分野での協力について話し合うと見られます。もし、実際に無人機が供与されれば、戦況にも影響が出るだけに、イランに対する風当たりが、いっそう強まるでしょう。

Q3:

ロシアとトルコの間では、何がテーマになりますか。

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A3:

トルコのエルドアン大統領は、プーチン大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領の双方と対話を重ね、停戦に向けた仲介を続けてきました。ウクライナで収穫された小麦などが、ロシアによる港の封鎖で輸出できず、世界的な食糧不足や価格高騰を招いている問題でも、先週、トルコで実務者レベルの交渉が行われ、輸出再開に向けた進展がありました。この問題をどう決着させるかを含め、戦争被害の広がりをくいとめる成果が期待されます。

(出川 展恒 解説委員)


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