ウクライナでは、ロシア軍がミサイル攻撃や砲撃を多用し、攻勢を強めています。
ウクライナ軍は巻き返すことができるのか、津屋尚解説委員にききます。
Q:随分グローブの大きさが違いますね?
A:双方の戦力をグローブにたとえてみました。戦争は140日を越え、ともに多くの人命が失われる消耗戦になっています。ウクライナは、国民の抵抗の意思と欧米の軍事支援に支えられて、一時は攻勢に出たこともありました。しかし劣勢が目立ってきたのは、ロシア側が戦い方を大きく見直した影響だと思います。
Q:どういうことですか?
A:ロシアは、当面の作戦目標を東部地域の掌握に変更して、戦力をこの地域に集中させてきたんです。これによって、武器・弾薬の数と量で勝る強みを生かして「火力」でウクライナを圧倒できる状況を作り出したんです。一方、ウクライナにとって“頼みの綱”である欧米から武器供与は、行われてはいるものの、「武器がぜんぜん足りない」とゼレンスキー大統領は訴えています。
Q:ロシア有利の状況は続きそうですか?
A:ロシア側にもほころびはあって、苦しまぎれの作戦も目立っています。
例えば、市街地にある建物の攻撃に、古い対艦ミサイルを投入しています。この対艦ミサイルは、障害物のない海の上を飛んで敵艦に命中させるものなので、いくつもの建物が立ち並ぶ中から特定のビルを狙うような命中精度も破壊力もありません。なのにあえて使っているのは、経済制裁によって高性能ミサイルの部品の入手が難しくなっているという事情があるんだと思います。
Q:ウクライナは巻き返すことはできるんでしょうか?
A:それにはまず、ウクライナ国民が“抵抗への強い意思”を持ち続けられるかどうか。そして確かなことは、外国からの支援なしにウクライナの勝利はないということです。つまり、ロシアとの戦力差を埋めるだけの兵器を欧米が一気に最前線に届けることができるかどうか、これが戦況を覆すための最大の鍵だと思います。
(津屋 尚 解説委員)
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