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アメリカ中絶論争で中間選挙に影響は?

髙橋 祐介  解説委員

アメリカで、人工妊娠中絶をめぐる連邦最高裁判所による判断が論争を呼び、秋の中間選挙でも主な争点のひとつになりそうです。髙橋解説委員です。C220708_4.jpg

Q1)
けさのイラストは、裁判所前でバイデン大統領とトランプ前大統領がにらみ合い?
A1)
事の発端は2週間前、連邦最高裁が、妊娠中絶を「憲法上の権利」と認めた49年前の判例を覆したことから始まりました。これにより、全米50州のうち、今のところ少なくとも21の州で、中絶が禁止または厳しく制限される可能性があるとみられています。
「胎児の生命尊重」を掲げる中絶反対派は、共和党を支持する保守的なキリスト教徒に多く、今回の判断を大歓迎しています。これに対して、中絶容認派はリベラルな民主党支持層に多く、「女性が出産か中絶かを選択する権利を奪われる」と激しく反発しています。

Q2)
なぜ、中絶の権利を認めた判例は覆されたのでしょうか?
A2)
いまの連邦最高裁が“保守派優位”になっているからです。最高裁の判断は、9人の判事の多数決で決まります。現在は保守派6人、リベラル派3人。判事は終身制ですから、本人が死亡または自ら引退しない限り、そうした“保守派優位”は当面続きそうです。
しかも、妊娠中絶にとどまらず、ほかの問題でも、双方の意見は対立しています。

Q3)
ほかの問題って何ですか?
A3)
たとえば、同性どうしの結婚です。連邦最高裁は7年前、同性婚を禁じた州の法律は憲法違反との判断を下しましたが、そうした判例も今後覆される可能性が指摘されています。
いまバイデン大統領の支持率は低迷し、秋の中間選挙で民主党は、議会で多数派の座を失いかねないことから、今回の判断を選挙の争点にすることで、反転攻勢のきっかけをつかみたいとしています。これに対して共和党は、最高裁判断を弾みに、中間選挙で圧勝をねらいます。司法判断が浮き彫りにした“ふたつのアメリカ”。内戦にも喩えられる双方の対立は、ますます激しくなりそうです。

(髙橋 祐介 解説委員)

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