NATO=北大西洋条約機構の加盟国は、5日、北欧のスウェーデンとフィンランドの加盟に向けて、「加盟議定書」に署名しました。この2か国の加盟に難色を示していたトルコが、一転して支持に回った背景について、出川解説委員です。
Q1:
トルコが、急に態度を変えたのはなぜですか。
A1:
エルドアン大統領のしたたかな外交駆け引きです。先週のNATO首脳会議の直前、スウェーデンとフィンランドの両首脳と直接会談し、両国からトルコの要求を受け入れる約束が得られたため、NATO加盟を認めたと説明しています。
Q2:
トルコは、どんな要求を出していたのですか。
A2:
トルコは、分離独立運動を掲げる少数民族のクルド人の武装組織を「テロ組織」とみなし、軍事攻撃や摘発を行ってきました。そして、両国が、活動家らの政治亡命を受け入れてきたことや、トルコへの武器輸出を制限してきたことに強く反発し、それらをやめるよう求めていました。
エルドアン大統領は、来年、大統領選挙を控えているのですが、「両国ともに、クルド人武装組織への支援をやめ、テロ容疑者の身柄の引き渡しに応じ、武器輸出の制限もやめると約束した。これは、大きな外交成果だ」と国内にアピールしています。
Q3:
2か国のNATO加盟は、もう確実と言えるでしょうか。
A3:
そうとまでは言えません。NATOへの新規の加盟には、すべての加盟国の議会での批准が必要で、何か月もかかると言われます。ところが、トルコ側が主張する、「テロ容疑者」の身柄引き渡しをめぐって、対立が再燃する可能性も残っているからです。
エルドアン大統領は、会見で、「スウェーデン政府が、テロ容疑者73人の引き渡しを約束した」と述べました。これに対し、スウェーデンのアンデション首相は、「国内法や国際法に基づいて判断する」と述べています。人権を重んじる北欧の国が、亡命してきた活動家を、簡単に引き渡すことはないだろうという見方もあります。
2か国のNATO加盟が実現に至るかどうかは、引き続き、エルドアン大統領の出方にかかっています。
(出川 展恒 解説委員)
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